内容説明
世界各地で武力紛争が絶えない中、紛争の終結と国家の再建、そして平和の定着をどう実現するか。武装解除、選挙の実施、経済計画…。著者は緊迫するアフガンと東ティモールで、政治指導者や軍閥へのインタビュー、住民の意識調査を実施。その結果から、あるべき「平和構築」を提言する。国連は、日本は、何をなすべきなのか。
目次
第1章 「平和構築」の現場から―生と死を賭けた活動
第2章 平和構築とは何か―その歩みと考え方
第3章 拡大する負の連鎖―アフガン(1)
第4章 「非合法武装組織」解体の試練―アフガン(2)
第5章 タリバンとの和解は可能か―アフガン(3)
第6章 自立をどう実現するか―東ティモール
第7章 これからの平和構築と日本
著者等紹介
東大作[ヒガシダイサク]
1969年、東京に生まれる。1993年から2004年までNHKディレクター。企画・制作した主なNHKスペシャルに「我々はなぜ戦争をしたのか―ベトナム戦争・敵との対話」(放送文化基金賞)、「犯罪被害者はなぜ救われないのか」、「憎しみの連鎖はどこまで続くか―パレスチナとイスラエル」、「核危機回避への苦闘」、「イラク復興国連の苦闘」(世界国連記者協会・銀賞)など、退職後、2004年8月からカナダのブリティッシュ・コロンビア大学大学院に留学、2006年に修士課程を修了。現在は同博士課程で国際政治を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スー
19
64東ティモールとアフガニスタンでの国連と多国籍軍の平和活動を現地の人とスタッフのインタビューから分かった問題点を解説しています。東ティモールは東京・千葉・埼玉・神奈川をあわせた面積とほぼ同じ小さな国で油田が見つかった事による豊富資金で家を失った人達を支援したりした為に上手くいった例です。しかし職業難と貧困、地域差別の問題が課題。あと国連が平和維持軍を派遣せずに独立選挙をした事で悲惨な状況になった事と派遣軍をPKOにするか多国籍軍にするかも今後の課題。アフガニスタンは日本の1.7倍の面積で多民族国家。2019/04/26
とある本棚
2
再読。良書。問いの立て方からインタビュー調査、そして分析までお手本のような構成の調査レポートである。2009年の本ではあるものの、混迷深めるアフガニスタンの現場を理解する上でも参考になる。インタビュー調査を通じ、国連PKOの方が多国籍軍のオペレーションより住民から正統性があるとみなされているという結果は興味深い。2021/10/04
リノ
1
「日本も大量の取り組むべき問題を内包しているのに、なぜ外国に大金の支援をするべきなのか?」という疑問を持っているすべての人に読んで欲しい。 相互依存とも捉えられるグローバル化が進む現代において、自国の利益のみを追求することは持続可能な国家造りを妨げること、そして何より第二次世界大戦の敗戦からここまで民主主義の国家を造ってこられたのは世界のサポートがあったからということを忘れることは都合が良すぎると思う。 ページ数も237と多すぎないのにボリュームたっぷりの内容でオススメ!2022/03/03
Elstir
1
事例としては少し古くなったアフガン・タリバン問題だが、タリバンに協力する在地の武装勢力が皆イデオロギーのために戦っているのではなく、地域コミュニティの存続のために武器をもってタリバンの指示に従わなければならない状況にあるという事実は、現在のシリア問題を考える上でも記憶しておくべきことだろう。国連の平和構築の取り組みは、いかにして衝突する各アクターを和解させ、住民から正統性を認められかつ実効性ある政府を樹立するかにかかっているが、それは決して外部からの武力介入だけによって成功するものではない。2016/05/22
偏頭痛
0
読みやすい。アフガンや東ティモールを例に平和構築の現場から問題点やどうやって信用勝ち得ていくかなどがわかる。正当性が重要というのはあまり思ってなかったが納得できることではある。組織がバラバラに活動してしまうのは縦割りみたいなことになってマズイんだな。中途半端な介入になってしまって返って悪化させてしまう要因。きちんと介入できないのはいろいろとマズイ結果を導くようだ。2017/05/25