出版社内容情報
明治以来の詩文中にもっとも「日本的なるもの」を求めるならば,まず虚子(1874‐1959)のものを挙げねばなるまい.淡々とした文学の中に,空気や情景の濃やかさを描き出す特異なその小説の風俗は,湿度がこまかく,季節の変化のめざましい風土に住むわれわれ日本人ならば誰もが懐かしさを感ぜずにはいられない純粋に「日本的なる」文学である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nemorální lid
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懺法と言うのは懺悔する際に行う儀式の作法を表す仏教用語で、"風流懺法"と題しただけあって情景が淡々として且つ繊細な味わいを深く残している。日本的風土に特有な人と人との関わりの中に見出される幽玄性や侘び寂びの色が濃厚なタッチで描かれ、見事にも淡い情景と適合して傑作に成り上がっている。夏目漱石は『小坊主の運命がどう変ったとか、どうなって行くとか云う問題よりも妓楼一夕の光景に深い興味を有って、其光景を思い浮べて恋々たるのである』と述べており、こうした虚子の文に内在する『日本的なるもの』にとても心を打たれた。2018/04/04