出版社内容情報
明治とはどんな時代だったのか.いまなお評価の衝突する明治文化の全体像を,底辺の民衆の思想に視座を据え,自ら発掘した原史料を駆使して歴史の躍動の中に描きだした.民衆思想史の方法で日本の近代像を一変させた著者の代表作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
belier
3
印象的な部分をかいつまんで書く。まず、明治初期には民衆の民権運動が盛んで憲法草案を作成までしたが、秩父事件などを経て潰された。次に、貧しい人たちは貧乏や不幸になったのが自分たちの罪によるという諦念が植えつけられた。そのため『女工哀史』の不当・不義に対しても現状変革への要求が生まれにくくなった。そうした感覚を地主や資本家は利用した。また、日露戦争の頃から大衆を「国」に同化する動きが強まった。1910年頃からは国定教科書が教育の力を発揮し、「封建的忠誠心」と「近代的機能主義」を統合するように進められた。2022/01/01