出版社内容情報
短歌,俳句,詩,そして演劇,映画にかつてない足跡を残し,現代に影響を与え続ける寺山修司.彼は少年時代から短歌を書き始め,20代の時に出した『田園に死す』以来歌作を中断していたが,晩年に書きためた作品群が発見された.幻想の家族,少年,生と死,言語と書物などをテーマに新たな寺山世界の出現を知らせる歌集!
内容説明
没後25年、新たな寺山修司の発見。
目次
消しゴムの孤島
影のコンパス
遠き昨日
転生譚
家なき子
わが家族変
父と子
父の惑星
母の古代
死の途中
おくれてゆく霊柩車
めかくしの闇
個への退行を断ち切る歌稿―一首の消し方
『月蝕書簡』をめぐる経緯
資料 歌稿ノート
著者等紹介
寺山修司[テラヤマシュウジ]
1935年生まれ。10代から作歌をはじめ、1954年「チエホフ祭」50首で「短歌研究新人賞」特選となる。1957年第一作品集『われに五月を』、翌年第一歌集『空には本』を刊行。以後前衛短歌の旗手として歌の世界をリードするとともに、詩、俳句、演劇、映像、批評とジャンルをこえて旺盛に作品を発表し続ける。1967年「演劇実験室・天井桟敷」結成。1983年逝去
田中未知[タナカミチ]
1945年生まれ。作曲家。「演劇実験室・天井桟敷」の旗揚げからのメンバーとして制作、照明を担当。自らの創作活動のかたわら、秘書として寺山修司の死までの16年間、寺山の仕事を支えつづけた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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masa@レビューお休み中
87
寺山修司の未発表歌集『月蝕書簡』。この響きだけで衝動的な何かが体の奥底から湧き起こる。蠢くその感情は、必ずしも正常なものとは限らない。どこかいびつで異質で異端なもののような気がする。日常では決して表に出してはいけない禁断の部分。それを寺山はいとも簡単に引き出してしまう。「幻燈にうつし出されし砂男われにひとりの兄ありし嘘」、「母と寝ててのひらで月かくしみる父亡きあとの初の月蝕」、「母と寝ててのひらで月かくしみる父亡きあとの初の月蝕」。歌を読むだけで息が弾み、鼓動が速くなる…。2016/04/19
はちてん
28
バスの車窓から見た天井桟敷の奇っ怪な外観。リアルタイムで見た寺山は変態オヤジの印象のまま。けれど「家出のすすめ」「書を捨てよ…」には大いに影響され本気を出した。そして当時の寺山の歌。『虚の人』といわれた存在が本人が亡くなってから実感される。そして未発表歌集。老犬に映された老いと渇いた質感が晩年を感じさせる。晩年とはいえ寺山は早くに死んでしまったから後付けの印象だろうか。天才歌人といわれたが歌は20歳そこそこで止めている。死者のノートを引っ張り出し公に晒す必要はあったのか。→2013/12/17
にゃんこ
27
【図書館】 初寺山修司作品。 これは、「未発表歌集」となっている通り、本人が発表をしていなかった作品らしい。 短冊型の紙に清書らしきもので書き残したもの、さまざまな紙に書きなぐったものなど。 掲載されている写真、直筆のノートの断片を見ると、短歌として形になる前の、イメージめいたものの書き付けも沢山あるんだな〜というのがよく分かる。 初期の、全盛期であろう作品は残念ながらまだ知らないが、この、本人が納得せずにお蔵入りになったという今回の作品からも、凄いエネルギーを感じる。2014/10/13
Maki
16
図書館。未発表作品を秘書だった編者が出版したという。同じ題材の歌が続いていたりして寄せ集めた感が否めない。本人も過去の模倣と言い作っては消していたとのこと。わたしには硝子のような冷ややかさと朽ちていく香りが感じられた。佐々木幸綱氏との対談がわたしには難しかったけど、意見が違うけれど押し付けることなくでもきちんと相手の話も聞き自分の考えも伝えていて大人の対話で惚れ惚れした。2018/11/07
あーちゃん♪
14
NHK短歌で佐佐木幸綱先生が紹介なさっていた。寺山修司の未発表歌集。久しぶりに寺山修司の歌を読んで、原点に返ったような心地がした。また読みたい。2016/03/05