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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よこたん
51
“いまも、京のまちをあるくと、あのほそい路地のおくから走り坊さんの、はしるあしおとがきこえてくるそうな。” 「除災与楽」のお札は、皆に行き渡っただろうか。ひたすら走り、皆に届けたものは、役に立っただろうか。名声も何もいらない、走り回った一日を締めくくる一杯のお酒さえあれば。お寺のおしょうさんは、走り坊さんがほんとうは何者かを知った上でこの役目を与えていたのだろうか。“かわがはんらんしていえがながされたり、やまがくずれたり、それはそれはたいへん。” 走り坊さん、今こそ出番ですよ。あなたが走る足音が聞きたい。2020/07/09
けろりん
45
たったった。むかしむかし、京のろうじを走り抜け、みんなにありがたいお札を届ける坊さんがいた。雨の日も雪の日も、一途な目をして、きれいな芸妓さんにも、えらいお殿さまのご褒美にもみむきもせず。大きな台風が来た年、飢饉や疫病の心配で、人々から笑顔が消えた。崖崩れの道もなんのその、薬や食べ物、布団まで届けて回った帰り道、はしり坊さん、姿が見えなくなってしまった。花ざかりの崖の下、口にお札をくわえた赤い顔の鬼さんのなきがらが見つかったって。季節外れの蛍がいっぱい飛んでいたって。たったった。今も聞こえるよ。魂の足音。2020/03/29
ヒラP@ehon.gohon
17
ランニングが趣味で、お酒が好きで、読み聞かせが好きな自分のための絵本だと思いました。 それにしても、世のため人のため、休むことなく走り続けるお坊さんに感動しました。 それだけに正体がわかった時には動揺してしまいました。 功徳のある絵本のように思いました。2021/07/02
さいちゃん
7
タッタッタッタ、タッタッタッタ、京の都をおしょうさんのお使いで一日にニ百軒以上も檀家にありがたいお札やことづけを届けに走りまわるお坊さん。嬉しくて楽しくてしょうがない。ところがある夜を境に姿が消え、谷にはお札をくわえて亡くなっているあかい鬼さんが見つかる。最後のタッタッタッタは文字がだんだん小さくなって消えそうな感じ。切ないね。2020/06/15
遠い日
3
創作民話だが、味わいがあって好ましかった。おふだを檀家に走って届けることで、京の町の人々に知られるようになった走り坊さんの、身の上を明かす。余りにも早い足と口からふだを出すところが、既に伏線だったかと読み終えて気づく。ダイナミックでスピード感にあふれる物語に、知らず引きこまれた。坊さんの最期も、人々のために一生を駆け抜けたと考えれば本望だったのではないか。2014/09/22