内容説明
４０歳を過ぎるまで「結婚しない男」だったチェーホフが２０代の終わりに書いた結婚をめぐる３つの戯曲。人生の一大事がこんなにおかしくていいんだろうか？思い込みあり、すれちがいありの結婚は喜劇の宝庫―「結婚申込」は日本を代表する劇作家・演出家と共に強烈な方言訳に。斬新な翻訳でチェーホフの面白さを倍増させた新編。
著者等紹介
チェーホフ，アントン・パーヴロヴィチ［チェーホフ，アントンパーヴロヴィチ］［Чехов，А．П．］
１８６０‐１９０４。黒海につながるアゾフ海沿岸の町タガンローグの商人の家に三男として生まれる。学校に通いながら家族の生活を支えるために働き、その一方でユーモア小説などを書きはじめる。モスクワ大学医学部に入ってからは短編を中心に作品を雑誌に発表し、やがて一流の小説家として評価されるようになった。執筆を一時中断してサハリンへの調査旅行を敢行し、その後も医者としての社会活動をつづけながら時代の変化と人々の心を映す優れた短編・中編を書いた。晩年には代表作とされる戯曲『かもめ』『ワーニャ叔父さん』『三人姉妹』『桜の園』を発表し、モスクワ芸術座をはじめロシアの演劇界の革新に多大な影響を与えた
牧原純［マキハラジュン］
チェーホフ研究家・翻訳家
福田善之［フクダヨシユキ］
劇作家・演出家。日本演出者協会理事長（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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スミス市松
18
チェーホフが二十代の終わりに書いた、結婚にまつわる一幕劇三編を収録。美しい未亡人のもとに夫が遺した借金を取り立てに男がやって来る「熊」、「結婚申込」では求婚に来た男が話の切り出し方を間違えていつのまにか土地のいざこざと飼い犬自慢合戦にとって代わり、全編これ熱狂的な熊本弁（！）による大喧嘩がくり広げられる。ダメな人しか出てこない「結婚披露宴」を読んで、実は結婚式それ自体が出演者は全員素人の稽古なし・リハなし・一発勝負の一幕劇なのかもしれないと思った。（続）2016/03/26
きゅー
10
20代の終わりにチェーホフが書いた、結婚をテーマにした一幕戯曲三編が収録。「熊」では、地主の未亡人と手形の支払いを求めにやってきた男が大喧嘩するが、そこでなぜか恋心が芽生えてしまい急展開。「結婚申込」では田舎の地主同士の口喧嘩ということで、九州弁で翻訳されている。「ああた、わしゃそげん口のききかたさるる覚えはめったになか、てなこつばい」。こんな感じでかなり笑えた。結婚についてというよりも、男女の恋愛について皮肉のきいた3篇。2017/11/30
Miyoshi Hirotaka
5
「結婚は喜劇の宝庫」というのは今も昔も変わらない。思い込み、すれ違い、勘違いのオンパレード。人生の一大事がこんなにおかしくていいのだろうかという話が展開する。かく言う私も教会の挙式に必須の結婚講座に落第。困り果てた妻が神父に相談し、「残りはあなたが教えなさい」の一言に救われた。以来、妻が愛を教え続け２５年。余命１０ヶ月の闘病を見守った友からの葉書には「あなた達のように今日もひとつ屋根の下で家族と共にいられることが奇跡と思える人になりたい」との一文。やっと結婚講座の単位が認定された。妻の霊前に祈りを捧げる。2013/05/05
かづ
3
職員室にあった本をこっそり。未亡人と野蛮人の話「熊」が可愛くて？よかった。言い合いしてるうちに急に惹かれ出すコメディみたいなのがテンポよく書かれてて、ロシア人の会話の仕方みたいなのが想像できて面白かった。解説も面白かったなあ、と。40歳で結婚して40代前半で亡くなったチェーホフは、何を考えてこの3部作を書いたのだろうか。はて。2019/11/13
保山ひャン
3
チェーホフが書いた、結婚をテーマにした１幕戯曲を３編。「熊」「結婚申込」「結婚披露宴」。喧嘩しながら恋心がめばえたり、プロポーズに行ったのに大喧嘩になったり、はたまた、披露宴で海軍中佐が専門用語満載のスピーチをえんえんとはじめて皆をうんざりさせたり。先日読んだ『漂流』で、筒井康隆が高校時代に「結婚申込」を演じて喝采を浴び、小松左京が大学時代に「熊」を演じていたとの記述があった。ＳＦ作家ふたりがチェーホフを経由しているのがわかり、面白い。2016/08/07
