内容説明
本書は、南方熊楠の土宜法竜宛書簡24通と、土宜法竜の南方熊楠宛書簡31通を収録・編集し、注記を付したものである。
目次
1 ロンドンパリ往復書簡
2 和歌山京都往復書簡
3 南方熊楠書簡(那智)
4 未公表南方熊楠書簡
南方熊楠・土宜法竜略年譜
書簡による南方学の創生
感想・レビュー
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roughfractus02
10
本書は南方熊楠と真言宗僧侶土宜法龍のロンドンでの出会いから晩年まで続いた55通の書簡を収める。土宜が錯綜する熊楠の思考を触発し、因果中心の西洋科学に東洋的な縁起を融合させ、熊楠の「心と物で事を成す」「事の学」(中村元が本書簡の図を「南方曼荼羅」と呼んだ)の形成を促した軌跡が辿れる。一方、仏教に関する熊楠の質問や西洋の学に対する土宜の質問の往復の中で、物を注視する熊楠と心を重視する土宜の齟齬も窺える。この対話の過程で熊楠は近代の学では把捉不能な「不思議」を大日如来や華厳哲学のビジョンに照らして追求している。2022/11/12