感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
377
中村哲医師の、ペシャワールとのそもそもの関りから、らい(ハンセン病。中村氏はあえてこの言葉を用いる)専門医としての日々、やがて各地に診療所を開設し、総合病院を立ち上げるまでの15年間の回想記。内容的には、他の著作と重なる部分も多いが、その時々の中村医師の内面は最も発露されているか。しかし、ほんとうにすごい人だ。日本的な(それは西欧世界をスタンダードとした世界のでもある)常識が全く通じないパキスタンやアフガニスタンで誠心誠意尽くしてきた結果がこれだった。彼がここに来るまでには、数々の偶然が重なったようにも⇒2022/08/22
belier
4
中村医師、84年から99年までのパキスタン、アフガンでの活動。その間アフガンはソ連が去り内戦で人心は疲弊し、貧困層の支持を得てタリバンが台頭。ペシャワールのらい病病棟に赴任した著者は、当地のハンセン病患者救済に止まらず、マラリア治療でも大きな成果をあげ、活動範囲はアフガンの奥地まで広げる。だが病院内での政治闘争に巻き込まれ、所属した病院から離れることになり、独自で病院を建てることになる。この時期、中村氏は患者相手だけでない面倒な苦労を経験したが、この後の医療にとどまらない活躍へのお膳立てとなったのだろう。2021/09/02
あべし
3
中村医師の志に感銘を受け、読んだ本。訃報を聞いて初めて中村医師の存在を知ったことを恥ずかしく思う。そして、こうして、日本人が人種の枠を越えて、人類を支えようとする気概を誇りと思う。 用水路建設の前に、病院まで建設をしていたことに驚きを隠せない。本当に多くの事業を手掛け、命をかけてアフガニスタンの復興を目指したのだと思った。 美談にはしたくはないが、中村医師の偉業が記事になったため、その生き様を知って欲しくて子どもたちに授業をした。子どもたちも感動していた。本気の姿勢は心を動かす。改めて感じた。2020/02/02
だいだいいろ
2
ゆるがない信念と包容力の人 あとがきの直前の終わりなき旅の節を読んで涙が出た ・生きる意味なぞ、死ぬ前に分かれば儲けもの…生きることがディベルティメントというわけだ でも、生かされた恵みに報いて、ディベルティメントは美しく響くものなんだ… 達観しているのか実感なのか。50歳過ぎでこう語れるのはそれまでの経験からにじみ出てくる言葉なのだろう。2020/02/01