感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こかげ
13
とにかく「とんがってる」本だった。イエスという人を今の時代に引き寄せて解釈するのではなく、徹底的に当時の歴史、社会の中に視点をおいて、彼の人生を眺めたときに見えてくる人物像を語っている。遠藤周作や井上洋治のイエス像から受ける優しい印象とは違う“逆説的反逆者”イエス。愛や寛容、彼岸の救いを語るのではなく、虐げられた民衆の苦しみを共有し、宗教的支配者からの抑圧を跳ね返す。新鮮で面白かったけど、そのイエスに民衆が何故あれほど慕い付き従ったかの根拠が弱いように思えた。2023/09/22
Midori Nozawa
11
2022年最後の読書となりました。教会の図書を借りて読了。荒井献著「イエスとその時代」で田川氏の名前を知り、こちらの本も読みたくなり手にした。イエスという人が今まで考えていた人物像と大分変ってしまった。けれど私がキリスト教をよいと思ったのは、遠藤周作や三浦綾子や星野富弘等によって描かれたイエス像で、それも間違いとは言えないと思う。聖書を読んで理解に苦しむ聖句がある。そのような聖句の解釈が出ていて興味を持った。本書ではイエスは逆説的な反抗をする人。古代人イエスの時代の政治、神、貧富の差、性差など学べた。2022/12/31
無識者
10
イエスの言動を永遠普遍の真理としてではなく、その時代、状況から解釈することで、イエスという人物像が浮かび上がる。イエスは反骨精神の塊のような人で、利害特質なしに自分の信念に忠実に生き、当時の救いにならないようなシステムをひっくり返していくのだ2016/12/18
わいほす(noririn_papa)
9
福音書という神の子イエスとしての伝説から史実と思われるものを抽出し、人の子イエス本来の生き様、真実を描こうとすれば、多かれ少なかれその著者の思い描くイエス像が反映され、著者の心の鏡となって現れる。それはあまりにも歴史的情報が少ないせいなのか、それともイエスそのものの持つ器の大きさゆえなのか。 田川氏の描くイエス像は、現状を支配する「真理」を拒否する逆説的反抗者であり、それは数多の神学者や歴史学者のイエス像を皮肉とともに切って捨てる田川氏そのものに見える。(以下コメントに続く)2018/03/21
Mikio Katayama
8
文献学的成果を踏まえ、福音書を徹底的に読みこむことによって、歴史的イエスの姿に到達しようという試み。田川は逆説的反抗者としてユダヤ社会に抹殺されたイエスの姿を見出した。田川の攻撃的な筆致によって描き出されたラディカルなイエスは、あまりに現代的で人間的過ぎるようにも感じられる。キリスト教の世界の内側ではこのような生々しいイエス像が受け入れられたことはなかっただろう。田川の強引で暴力的な筆致は魅力的だ。いくつかの解釈に強い共感を覚えた。2016/09/08