戦場の疫学

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戦場の疫学

  • 常石 敬一【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 海鳴社(2005/11発売)
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  • サイズ B6判/ページ数 224p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784875252269
  • NDC分類 210.7
  • Cコード C0021

出版社内容情報

 疫学の疫は「流行病」のことであり、疫学とは「流行病学」のことである。
 ペスト菌や炭疽菌といった感染力の強い病原体に侵された患者が発生すると、疫学の出番である。感染ルートと患者との接触者をいち早く調べあげ、犠牲者をなるだけ少なくする方策が立てられる。人的隔離はもちろんであるが、大規模な流行には交通の遮断・経済封鎖も考えねばならない。人命救助と社会の安全を目指す医師・研究者の活躍の場である。
 しかし、それが戦争やテロとなると、話は逆になる。相手にダメージを与える手段が武器となるのである。それもバイオテロなら、相手に気づかれず密かに遂行することも可能である。
 戦前、浜松での食中毒や満州におけるペストなどに、まじめに精密に取り組んでいた研究者たち……その一方で、その実績・経験をさらに推し進め、生物兵器の開発が「防疫研究」の名の下に大規模に画策される。
 本書は、「優秀な」研究者たちが総力戦の下で、人体実験を含め細菌兵器の開発・実践に突き進んでいくさまを、資料を丹念に読み込み科学史の立場から明らかにした。著者三十年近くの研究成果。

序章 バイオテロの早期発見には疫学が必要

1章 浜松事件の概要
「細菌中毒」という診断確定まで
学校長から警察(県庁)へ
軍にも発生していた
ゲルトネル菌中毒と餡餅中毒
軍と民、両方での患者発生――情報開示

2章 浜松菌確定後
菌特定後の調査体制
被害の差をどう考えるか――民間人と軍
汚染食品の特定――民間と軍との摂取物の比較対照
汚染時期の特定
汚染経路――どのように汚染されたか
誰がどのようにして汚染したのか――犯人探し
紅白の大福餅を分けるもの――餡でもない、着色料でもない…
浮粉が原因
生物兵器への幻想
ゲルトネル菌その後

3章 新京ペストの概要
発生の確認―――情報の確認
首都ペスト汚染に驚愕
新京防衛体制の確立―――関東軍の登場
石井四郎の登場
関東軍のペスト対策――家屋焼却と捕鼠作戦

4章 満州のペスト
中国東北部(「満州国」)のペスト
ペスト発生の歴史――中国の研究者
ペストの概要――日本側資料
肺ペスト
ペストの疫学――日本人研究者
ペスト調査所の設置――ワクチンの効果と媒介動物

5章 新京出動
ペスト制圧作戦――73

あとがき

二〇〇ページの薄い本だが、その割に原稿の完成までに時間がかかった。それは本書の記述の基となった「陸軍防疫研究報告」2部の論文、約九〇〇本の読み込み、解釈、位置付け、そして意味付けなどに相当の時間が必要だったということだ。これは別の観点からすれば、久しぶりに歴史的文献と向き合い、それを解読する楽しみを味わったということでもある。二〇〇四年六月、筆者は自分のホームページ(http://www.scn-net.ne.jp/‾tsunesan/)に次のように書いている。
常石の最初の著作は満州第七三一部隊(石井部隊)についての『消えた細菌戦部隊―――関東軍第七三一部隊』(一九八一年、海鳴社、その後、ちくま文庫)でした。
その後このテーマで何冊か著作を発表しましたが、まとまったものとしては『七三一部隊―――生物兵器犯罪の真実』(一九九五年、講談社現代新書)以降はありません。
現在一〇年ぶりにこの問題と正面から向き合っています。
七三一部隊については本文でも説明しているが、あえて説明すれば細菌やウイルスなどの兵器化、すなわち生物兵器開発のために人体実験を行い、三千人近くの人を実験の末殺害した旧日本軍の部隊ということになる。
このたびの『戦場米軍がつかんだのは一九四七年初めだった。それら人体実験データ入手のために米陸軍省は生物兵器の専門家N・フェルなどを派遣した。共同の記事は、筆者が米国公文書館で発見したGHQの情報責任者C・ウイロビー准将のメモ、「細菌戦に関する報告」に基き、フェルらの情報入手が戦犯免責を与えることにとどまらず、金銭をばらまくことで可能となったことを報じている。以下は、その記事に付けられた常石のコメントである。

フェルなど米本国の生物兵器専門家とGHQ参謀二部による七三一部隊関係者からの人体実験についての情報収集は、戦犯とはしないという飴と、断れば戦犯訴追という二者択一を迫ることで「強圧的に」行われたと考えていた。しかし実態は、金品で歓心を買って情報の入手が行われていたことが明らかとなった。ここには戦勝者と敗戦者という構図はない。むしろ人体実験の事実を見逃した失態を暴露された両者がなりふり構わず、金品で情報収集にはしった前のめりの姿勢が浮かび上がってくる。その結果が最終報告の「二五万円でこれらデータは入手できた。情報の価値からすれば取るに足らない額だ…これら情報を自発的に提供した人々がこのことで面倒に巻き込まれないよう処置されたい」

内容説明

本書は、「優秀な」研究者たちが総力戦の下で、人体実験を含め細菌兵器の開発・実践に突き進んでいくさまを、資料を丹念に読み込み科学史の立場から明らかにした。著者三十近くの研究成果。

目次

序章 バイオテロの早期発見には疫学が必要
第1章 浜松事件の概要
第2章 浜松菌確定後
第3章 新京ペストの概要
第4章 満州のペスト
第5章 新京出動
第6章 新京ペスト謀略説
第7章 ペストからノミの研究へ
終章 もうひとつの疫学

著者等紹介

常石敬一[ツネイシケイイチ]
1943年東京生まれ。1966年東京都立大学理学部物理学科卒業。1973年長崎大学教養部講師(その後助教授および教授)。1989年神奈川大学経営学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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