内容説明
若くしてドストエフスキーの『罪と罰』を翻訳し、丸善の顧問として「学鐙」を編集し、翻訳家・評論家・小説家、そして明治期文芸界において当代一の随筆家と謳われた「知の巨人・内田魯庵」の文明批評集。円転滑脱の語り口のなかに、エンサイクロペディストの該博な知識と旺盛な好奇心、機鋒峻辣なアイロニーが迸る。「われらが同時代人」ロアンの筆鋒は、百年の時空を超えて、現在を鋭く照射する。
目次
貘の舌(前口上;御一新の旧弊退治;『今昔較』;明治初年の進歩思想と言論自由;漢語全盛の文明開化;佐田介石及びランプ亡国論;ポスター宣伝;納札の過去現在未来;蒐集家;郵便切手と翫具;世界的蒐集;野蛮人の芸術;子ビンソン;埋もれたる天才;三百年前の日本人虐殺;キシーネフの虐殺;切支丹迫害;リンチ;猫)
貘の耳垢
著者等紹介
内田魯庵[ウチダロアン]
明治期の評論家、翻訳家、小説家。1868年(慶応4)、旧幕臣の子として生れる。本名貢。画家・内田巌の父。立教学校(現・立教大学)や東京専門学校(現・早稲田大学)などで英語を学ぶ(中退)。25歳でドストエフスキーの『罪と罰』(巻之一、二)を翻訳刊行。書籍部顧問として丸善に入社、PR誌「学鐙」の編集にたずさわる。不知庵とも号した。1929年(昭和4)没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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猫丸
11
横文字も含む膨大な読書に裏付けられた、時代的制約から自由なエッセイ。政治、経済、文学、風俗、洋画、邦画、広告意匠、骨董、歴史、猫、古書。やはり外国語ができるとハバが利くのは確かで、方々の洋書洋雑誌からオモシロ話を拾ってくる手腕は当時として随一だったのではないか。語学ダメダメ組としては反省しきり。翻訳モノだけでも溢れかえる時代に生まれたのだから幸いと慰めるしかないか。魯庵の視線は、反政府派や芸術的反主流派のみならず、時代錯誤的誇大妄想家へも公平に注がれる。それは赤瀬川原平の眼差しに近い。つまり、優しい。2023/11/04
河合部長
1
魯庵の二葉亭話は鉄板。2009/09/17
藍鼠
0
二葉亭四迷を扱ったエッセイはいつも愛にあふれていて好きだけど…。 おじさんうるさいよ!っていう記事も多かった(笑)2011/09/02
kokada_jnet
0
すばらしすぎるラインアップのウェッジ文庫だが。この本はちょっと駄目だった。1920年に読売新聞に連載したコラムということもあってか、魯庵の筆致が啓蒙的かつ「上から目線」で、読んでいて楽しくない。その不快さに、途中で読むのを止めてしまった。坪内祐三の解説も、相変わらず、何かこちらの神経を逆なでする。2009/11/01