内容説明
清朝最後の王女として生まれた少女は、辛亥革命の勃発により日本に渡り、川島芳子と改名する。清朝の復興を夢見る一方で、恋愛にあこがれる美貌の女性に育った芳子に、やがて戦乱が襲いかかる。日本の狭間で歴史に翻弄され、“男装の麗人”と呼ばれたひとりの女性の数奇な運命を活写する。芳子の生涯を辿ることは、日本の現代史を振り返り、日本人の平和観を問い直すことである―。
目次
トランクの中身
必死の助命嘆願
芳子処刑さる
たそがれの出生
父二人
芳子、日本へ
おっとりしたお姫さまぶり
ある一夜の出来ごと
粛親王死す
芳子、断髪する
はかなき結婚
暗転の上海
満州事変起こる
婉容の天津脱出と芳子
上海事変
満州国の建国
ふたりのヨシコ―山口淑子の追憶
著者等紹介
林えり子[ハヤシエリコ]
慶應義塾大学卒業、編集者を経て作家となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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七樹
3
約4ヶ月ぶりに再読。非常に読みやすく、面白いが、彼女の当時を知る人物が亡くなるなか、噂話やメディアの誇張表現に埋もれてしまっているのが非常に惜しいと思った。2011/09/19
ニックス
2
表紙に書かれた清朝14王女という文字と表紙の軍服に興味をもってこの本を手に取った。私は川島芳子を良く知らなかった。日本のスパイとして第2次世界大戦後処刑された人だが、なぜスパイをしたのか理由が分からなかった。しかし、理由はこの本を読めば分かる。川島芳子は人を惹き付けるに充分な魅力と出自を持っていた人物だったが、そんな人がなぜ日本のスパイとして活動したのか。自分のことのみでなく、清朝の復興も願った川島芳子の物語がこの本に書かれていた。星32019/02/12
Gen Kato
1
川島芳子の行動には謎が多くてその実体を追うのは難しいと思うのだけれど、この作品はわからないところはわからないままに、断定を避けつつ裁きもしないところが好きです。ことに最後を山口淑子に語らせたのがよかったかと。2015/03/01
石橋
0
謎の老人の語りから始まる不思議なノンフィクション。謎な時点でフィクションか?? 「清朝の王女、時代に翻弄された数奇な運命」と言えばなんだかロマンだが、読後の感想としては「ハリボテ」。逆にその薄っぺらさ故、哀れを誘う。病跡学的にこの人を考察してみたい。2015/03/01