内容説明
家畜・伴侶動物の「市民権」野生動物の「主権」…その境界にいる動物には?それぞれの動物にそれぞれの関係に基づく「権利」。従来の道徳的議論を超えて、豊かな例証とともに「動物の権利」を政治理論へと繋ぐ挑戦的な1冊。
目次
第1部 拡張された「動物の権利」論(動物の普遍的な基本的権利;シティズンシップ理論による動物の権利の拡張)
第2部 応用編(動物の権利論における家畜動物;市民としての家畜動物;野生動物の主権;デニズンとしての境界動物;結論)
著者等紹介
ドナルドソン,スー[ドナルドソン,スー] [Donaldson,Sue]
研究者、著述家
キムリッカ,ウィル[キムリッカ,ウィル] [Kymlicka,Will]
カナダ・クィーンズ大学哲学部教授
青木人志[アオキヒトシ]
一橋大学大学院法学研究科教授
成廣孝[ナリヒロタカシ]
岡山大学社会文化科学研究科・法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田蛙澄
1
従来の動物福祉や生態系主義、動物権利論を消極的で不十分な理論として批判しつつ、家畜のシティズンシップ、野生動物の主権、境界動物のデニズンシップという三つの面から動物との関係的な積極的義務について論じていて、特に従来あまり取り上げられなかった境界動物を一定の義務の免除と引き換えに限定的な権利を与えつつも都市設計などにおいて配慮するという点が新鮮だった。また従来だと批判的に扱われるけいこが強かったペットについてもシティズンシップによる積極的な関係があり得るのではと論じてる点は救われるなと思った。2019/10/18
Votoms
1
動物の権利論に新たな射程を与える快作だと個人的に思った。 伝統的な動物の権利論はフランシオンらを代表として廃止論や消極的権利論を論じるに留まっており、それが動物愛好者らを含めた潜在的には動物の権利を支持する可能性をもった人々を包摂する事を妨げてきた。また、伝統的な動物の権利論は理論的にも行き詰っており、そうした現状を認めた上で動物を正義に内包する理論を追求している。それぞれの動物との関係性に注目して積極的な権利を導き出す議論は、刺激的かつ堅実なロジックで組まれており、非常に面白かった。2017/03/25