内容説明
「ギリシャ人が考える『絶世の美女』とは」「ピュラデスとオレステスって危ない関係に見えるのは気のせい?」など上演背景と作品解釈について素朴な疑問に明快に答える。観る人にも創る人にも発見のある解説。
著者等紹介
山形治江[ヤマガタハルエ]
1959年群馬県生まれ。津田塾大学英文科卒業。1982~83年、英国ケント・アット・カンタベリ大学演劇専攻科留学。1987~90年、ギリシャ・アテネ大学大学院古典学科留学。早稲田大学大学院芸術専攻科博士課程満期修了。2003年、ソフォクレス『エレクトラ』の翻訳で、第11回湯浅芳子賞受賞。翻訳家、日本大学教授(研究所)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ハルバル
4
オレステスは正気の時でさえ、いまだ復讐の念に凝り固まって冷静ではないし、親友のピュラデスはそれを更に煽ろうとする。エレクトラも同じく。彼らは自分達が助かる為に罪に罪を重ねようとするのだ。そこに神の正義はない。「テロリスト」というのもあながち言い過ぎではないと思う。こうした復讐の連鎖をどう断ち切るかという普遍的な問題を「デウスエクスマキナ」で解決してしまったのは、無責任と批判されても仕方ないのかもしれないが、神でしか解決できないという諦めが悲劇を誘う2016/03/12
ジブリオ
4
案外、内容理解できた2015/02/28
そーすけ
1
116*今度は母親殺し。オレステスとピュラデスは同性カップルだったとのこと。『タウリケのイーピゲネイア』を読んだときは、あまりそういうニュアンスは感じなかった。収集がつかなくなりそうなところで、機械仕掛けの神が登場し、めでたしめでたし。これぞエウリピデス。2018/06/19
nightowl
1
オレステイア三部作が新国立劇場で上演されるとのことで、分かり易そうなこちらから手に取る。「トロイ戦争は起こらない」→「エレクトラ」と同様の緊迫感が襲い掛かり、ピークに達した瞬間急に如何にも神話めいた展開で幕を閉じる。このラストに対し不自然さを感じさせないよう仕上げるのが演出家の手腕と言えそう。本当にヘレネが憎たらしい。解説は苦心して書かれただけあって、ギリシャ悲劇に対し入り易いよう笑いも交えつつ丹念にまとめられている(謂わば光文社古典新訳文庫風)。読むなら最低上記二冊を読んだ後で。2018/02/09
カマタ
1
身内殺しの罪で罰せられる寸前の登場人物が神となり、すべてが丸くおさまる「デウス・エクス・マキナ」という手法、同じくエウリピデスの『メディア』は天に昇るのが主人公のメディアであるため、読後感が悪いという感じはしなかったが、本作においては終盤の三人に肩入れしていた分、結末で拍子抜けしてしまった。劇中に何度か出てくる「生きるか死ぬか、それに尽きる」というようなセリフからはシェークスピアの『ハムレット』を想起させられた。現在手元にないため確認できないが、福田恆存の解説にそのようなことが書いてあったような気がする。2013/11/29