出版社内容情報
怪談専門誌『幽』の連載に3篇の書き下ろし作品を加えた、8つの“幽談”を収録。怪談でも奇談でもない、怪しく奇妙な短篇小説集。
ああ、手首だと、私は思ったものである。切断された手首だとは思わなかった。誰の手首だろうとも思わなかった。ただ、手首だと思った。何故かは解らない。もしかしたら体温があったからかもしれない。ひんやりとした、女の体温。――「手首を拾う」より。
内容説明
八つの幽談を描いた、京極夏彦の別天地。怪談専門誌『幽』の連載を単行本化。
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
1963年、北海道生まれ。小説家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
144
怪談専門誌『幽』連載の8篇。出色なのは『手首を拾う』『成人』、共にオカルトとエロティシズムの相性を体現した話で、後者のネット談話を彷彿とさせる野心的な語り構造は本書の白眉。他とかなり出来が違う。『下の人』は反応の方を滑稽味豊かに描いた点で良いアクセント。「半分隠せば何もかも幽霊」とのことでアプローチは粒揃いであるが、後半に行くほど抽象的に傾倒し過ぎて求心力に欠ける。『逃げよう』の切迫感は空回りだし、ラスト3篇の説教臭い前振りやアイロニカルな応酬は迂遠かつ気取り過ぎ。どちらかというとマイナーな煮え切れなさ。2023/07/23
優希
95
奇妙な味の短編集でした。あちら側とこちら側の境界線が曖昧になり、落とし込まれる感覚が心地よかったです。理屈っぽさもありますが、そこは京極小説の醍醐味と言ってもいいでしょう。普通に怖い作品もありました。不気味だけれどそこが癖になりそうですね。夏に読むのが雰囲気出ていいかもです。2017/07/04
勇波
78
再読です。。皆川博子さんの「 薔薇密室」と同時に読んでるので、現実との境界線がさらに曖昧になり心地いい★2015/03/01
kishikan
70
京極さん初読み。てっきりホラーか幽霊の話と思っていたら、ゾワッとする話もあったけれど、哲学それも第一哲学を追求した作品みたいと思ってしまう。我にしても幽霊にしても、その存在を証明する術はない。貴方が見る世界と私の見ているものが必ずしも同じとは限らないし、もしかすると僕には見えないものもあるかもしれない。時間についても、私と貴方の時の過ぎ方は異なるかもしれないし、ましてや動物や虫が感じている時とは全く異なるかもしれない。「手首を拾う」「十万年」が印象に残るが、それ以上にいろんなことを考えさせる短編集。凄い!2015/02/24
財布にジャック
69
夜中にトイレに行けなかったらどうしようと思いながら読み始めましたが、それは大丈夫でした。怖さ控えめで、妖しい不思議な短編集。でも、後で思い出してじっくり考えちゃうとやっぱり怖いんですが。一番京極さんらしいのは「手首を拾う」、ちょっとユーモラスで怖さがストレートなのは「下の人」、そして最後に収録されているお話「こわいもの」で蓋をあけて出てくる物はいったい何なんでしょう?誰か教えてください!2010/08/02