内容説明
近世初期の歴史のカオスの中から日本最初に完結したイデオロギーが形成されるまでを追求し、欧米の東洋学界に持続的な反響をひきおこした日本思想論の待望の初訳。
目次
序 始まりの諸相
言説の軌道(武将権力の神威への変貌;体制の神聖化と発生の忘却)
支配思想の普及者―僧侶・法・ベストセラー
イデオロギーの空間―宮廷・儀礼・宗教の再中心化
山崎闇斎―道の再把握
垂加と崎門―道と言語
結論 歴史と沈黙―再構成された徳川イデオロギー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NASUCUBE
2
読み終わってから誤解に気づいた。これは江戸初期前後における観念体系の生成や流布や実装定着を歴史的に跡付けようとする論”ではない”。今日(あるいは昨日)、江戸初期前後において生成流布実装定着したと思い込まれていたとある観念体系は別の場所で生まれたと主張する本だ。言い換えると「あなたが江戸初期に生まれたと思っている観念系は実は別のここで生まれた」ということ(についての仮説)は教えるが「では実際に江戸初期あるいはその前後においてどのような思考や実践が生息してどう作用していたのか」についてはこの本は語らない。2015/01/26