内容説明
本書は2001年12月に八王子セミナーハウスで開催された第33回種生物学シンポジウム「植物の生活史―フィールド研究の現状と今後の展開」の講演内容に基づいている。幸にも日本には、「植物の生活史研究」に関して、世界をリードする数多くの研究者がいる。したがって、シンポジウムの講演者、すなわち著者の選択に苦労はなかった。本書では、各研究者の研究対象や解析法が多岐にわたるために各章は比較的独立した形で書かれているが、多様な植物群の生活史解明のために日々格闘している研究者のフィールド研究のモチーフやデザイン、そして対象としている植物の生活史のビビッドな実態が紹介されている。
目次
第1章 植物の集団生物学における生活史研究の役割―個体群統計遺伝解析とその評価
第2章 樹木の個体群統計遺伝学―アメリカブナの遺伝構造と集団の変遷史から
第3章 植物の生活史と行列モデル
第4章 渓畔林に生きるトチノキとサワグルミの生活史戦略
第5章 夏の森に生きる草花たち―コウヤボウキ連植物
第6章 林床植物個体群の存続を脅かす要因―オオバナノエンレイソウの保全生物学
第7章 湿原における種子の水散布―野外集団の遺伝変異と集団遺伝学的解析を用いた研究
第8章 水田環境に適応した雑草―イヌホタルイの生活史と進化
著者等紹介
堀良通[ホリヨシミチ]
茨城大学理学部
大原雅[オオハラマサシ]
北海道大学大学院地球環境科学研究科
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感想・レビュー
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shin_ash
6
植物の変化を評価する方法として、植物の個体群行列を構成するとしたら、どう考えればいいのか掘っている。本書は個体群行列に限らず、様々な方法での植物の生態系の調査報告集となっている。中には長期間にわたる調査によるものもあり、人間の時間スケールを超えるモノを理解することは大変なことであるとともに、それほど高い評価を受けるものでも理解されるものでもなさそうなので、好奇心がモチベーションとは言え、こう言ったことに取り組み研究している人達には頭が下がる思いだ。野外の自然状態をうまく測る、適切に評価するはとても難しい。2023/12/29