内容説明
国と闘い、“宅急便”市場を創った男の論理。宅急便で日本の生活を変えたヤマト運輸元社長、小倉昌男。自ら筆を執り、その経営をケーススタディで書き下ろす。生涯唯一の書。
目次
第1部 牛丼とマンハッタン―宅急便前史(宅急便前史;私の学習時代;市場の転換―商業貨物から個人宅配へ ほか)
第2部 サービスは市場を創造する―宅急便の経営学(宅急便の開発;サービスの差別化;サービスとコストの問題 ほか)
第3部 私の経営哲学(組織の活性化;経営リーダー10の条件)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
74
「宅急便の生みの親」小倉昌男が、自らの経験を経営論として語る。無謀と思われた個人宅配への参入。だが筆者には、全国規模の集配ネットワークを築けばビジネスになる成算があった。翌日配達などのサービスの差別化の継続、「サービスが先、利益が後」といった優先度の決断、規制でビジネスを阻む行政との対峙、現場の社員のやる気を引き出す全員経営などで、宅急便を飛躍へと導く。筆者の考える経営者の資質は、論理的思考、自立の精神、高い倫理観。企業の目的は永続することであり、そのためには利潤を生み続け、社会へ貢献を続けねばならない。2020/05/06
sas
49
「クロネコヤマトの宅急便」を創った小倉氏が自ら書いた苦労の歴史と経営哲学。成功体験を偉そうに書いた本とは全く違う。著者自ら試行錯誤しながら培った経営の哲学は大変勉強になる。商業貨物から個人宅配への転換、規制官庁との闘い、クール宅急便等の新商品の開発、常に不可能と思われたことに挑戦してきた歴史。結局、成功者とは人がやらないことをやった人なのだ。「経営とは論理の積み重ねである。考える力がなければ経営者とはいえない」「トップは常にフェアでなければならない」など、経営リーダー10の条件も非常に説得力がある。 2015/08/17
hit4papa
45
トップダウンはかくあるべしということが理解できます。誰も手を出さなかった宅配業への着眼点、採算ベースにのせる戦略ストーリー、全員経営のための人の掌握術。クロネコヤマトを一躍世に知らしめた経営者の名著です。
ito
43
断片的にしか読んでなかったので、改めて読み直した。私は著者の経営哲学が好きなのだが、その背景にある深い論理思考の記述にうなった。自分自身、情緒的な判断しかできないので、こういう論理思考の経営者には本当にあこがれる。宅急便の経営学とも言える本書であるが、流通業界の不条理への憤り、社会的存在である企業のあるべき姿が全編に貫かれている。宅急便の成功は、優れたビジネスモデルにあるのではなく、高い倫理観と論理の積み重ねにあるのだとあらためて感じた。2013/02/10
かっぱ
38
ビジネス書としてはかなり古いものになります。「クロネコヤマトの宅急便」で知られるヤマト運輸が、いかに時代の先を読んだ事業転換によって成長を遂げてきたかを社長がまとめたもの。大手デパートや企業との契約を思い切って無くすことで、宅配便事業に人、もの、金を集中する。過去の成功体験や短期の損失は顧みず、10年先の生き残り戦略を取る。「サービスが先、利益は後」、「安全第一、営業第二」などのスローガンで、社長の思いをドライバーなどの実質的に主力となる社員へ届くように伝えるなど、全員経営の取り組みは参考になる。2016/09/07