出版社内容情報
熊本・水俣地方で発生し、日本のみならず世界を震撼させた有機水銀中毒「水俣病」は、けっして過去の悲惨な出来事であったということだけにとどまらない。科学技術への盲目的な信仰と際限ない利益追求→自然破壊→いのちの危機という今日最も切実な地球環境の問題の、いまわしい“前ぶれ”だった。そして、裁判では一応の区切りがつけられたが、「なぜ、このような事態が起きたのか」「どうすれば再発を防げるのか」といった根本的な課題は、なおざりにされ続けている。
そのことは、原発事故、違法農薬、食品事件など、われわれの生存をおびやかす諸問題が跡を絶たないことからも明らかだ。今こそ、あらゆる角度から「水俣」が捉えなおされなければならないだろう。
本書は、熊本大・医学部以来、一貫して水俣病に取り組み、地球と人類の再生をめざす「水俣学」を提唱する著者の40年間の軌跡である。その真撃な姿勢、たぎる情熱は、われわれの胸を揺さぶってやまない-。
内容説明
水俣病問題は、けっして過去の歴史的事件ではない。水銀汚染は世界各地でいまだに止むことはなく、原発事故、薬害禍、食品事件など、あらたな環境破壊が続発している。わたしたちが自ら「明日」を切り開くために、「水俣学」の提唱者が開示する「希望への扉」。
目次
第1章 「水俣学」の原像(「水俣学」事始め;わたしの原風景 ほか)
第2章 忘れ得ぬ人びと(水俣を見つめ続けて;生命のみなもと ほか)
第3章 地球を蝕む水銀汚染(国際学会デビュー;第一回国連人間環境会議 ほか)
第4章 繰り返される過誤(足尾鉱毒;非命の死者 ほか)
第5章 希望の世紀めざして(薬害エイズ判決;ハンセン病判決 ほか)
著者等紹介
原田正純[ハラダマサズミ]
1934年、鹿児島県生まれ。熊本大学医学部卒業。同学部助教授を経て、熊本学園大学教授。水俣病研究者。カナダのほか韓国やベトナム、ブラジルなどでも環境汚染を調査、研究。『水俣が映す世界』(日本評論社)で大仏次郎賞。吉川英治文化賞、UNEPグローバル500賞を受賞。熊本市在住
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