内容説明
本書の大きな功績は、12世紀の物語作家たち、とりわけクレチアン・ド・トロワにとって1次資料として使われたテクストの神話的背景を探り、中世の心性(メンタリティー)と想像世界(イマジネール)との関わりで「イロニー」の問題を提起しているところにある。
目次
第1部 西欧中世文学研究と「イロニー」―修辞学的研究から神話学的研究へ(クレチアン・ド・トロワ研究における「イロニー」研究の位置;中世仏文学に見る「イロニー」研究の現況;神話学的読解へ向けて)
第2部 「イロニー的文体」―クレチアン・ド・トロワの物語の修辞学的分析(『聖杯の物語』における「対位法」の問題―「構造のイロニー」をめぐって;『クリジェス』に見る「構造のイロニー」―2世代並置による2部構成の戦略;『クリジェス』に見る「言葉のイロニー」と「状況のイロニー」―クリジェスの叔父アリスが占める「幻影」の極 ほか)
第3部 「イロニーとしての神話」―クレチアン・ド・トロワの物語の神話学的分析(「諺」の神話学―クレチアン・ド・トロワの物語に現れる諺研究の現況;アーサー王物語における固有名の神話学―ペルスヴァルの名をめぐって;神話学的読解の鍵としての「暦」と「固有名」―『クリジェス』に現れる「越えられない壁」の挿話をめぐって ほか)
著者等紹介
渡辺浩司[ワタナベコウジ]
1964年岐阜県岐阜市生まれ。1987年名古屋大学文学部卒業。1990年名古屋大学大学院文学研究科博士課程前期課程修了。1993年グルノーブル第3大学大学院でD.E.A.(博士課程高等研究免状)取得。1994年名古屋大学大学院文学研究科博士課程満期退学。名古屋外国語大学外国語学部専任講師、同助教授を経て、現在、中央大学経済学部助教授、文学博士。専攻は中世フランス文学
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