出版社内容情報
美術史学の巨星ゴンブリッチの全ての論考の基礎を確立した名著の翻訳。イタリアにおける赫々たる芸術上の諸天才を輩出したルネサンスという《時代》こそが、何よりも最大の才能と能力であることを実証した。
内容説明
本書は、『シンボリック・イメージ』とともに、著者のルネサンス研究の集大成のひとつをなすもので、その美術史学のいわば出発点を画する重要な著作である。芸術家の創造性がある環境のなかでのみ展開できるということ、この環境は結果として生み出される芸術作品に多大な影響を及ぼすということが示されている。
目次
第1章 芸術の発展に関するルネサンスの概念とその影響
第2章 アポロニオ・ディ・ジョヴァンニ―ユマニスト詩人の目を通して見たフィレンツェのカッソーネ工房
第3章 ルネサンスと黄金時代
第4章 芸術のパトロンとしての初期メディチ家
第5章 レオナルドの構図作成法
第6章 ラファエッロの“椅子の聖母”
第7章 規範と形式―美術史の様式的カテゴリーとルネサンス的理想におけるその起源
第8章 マニエリスム―その歴史記述の背景
第9章 ルネサンスの芸術理論と風景画の勃興
第10章 「古代風」様式:模倣と同化
第11章 模倣に関するレノルズの理論と実践
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
4
原題が詩のように韻を踏むのは偶然ではないように思える。美術を直線的で対立的な歴史の語りに対して、著者は、韻のように無意識化した各作品に帯びる社会規範や、美術外の領域が作品に定着する各時代の形式に注目し、美術史をも一つの近代の規範と形式による解釈として捉え直そうとする。本書は、その変動が顕著とされるルネサンス期を例に、絵画を空間と捉え、その見られ方を誘導する構図をテーマとし、それを見る者の規範と形式が加わって美術を構成する、という制作と享受の関係から芸術作品のあり方を検討する。2019/04/02
ik
2
ルネサンスについての著者の論文を集めたものなので論文によって切り口はさまざまなのだが、やはり表題作が読みごたえがあった。美術史を語る上でのカテゴライズは有益か否かという様式史の根本的な問題を問い直す。安易な二項対立には警鐘を鳴らしつつも、各時代において基準となる規範を見出し、そこからの差異によって時代の特徴を語ることへの可能性は示されている。古典―非古典―反古典という分け方も対立関係なのか量的関係などか等、古典主義を考えなおすよい契機となりました2013/05/28