内容説明
幻の処女作。父への手紙。自殺の詩。放送禁止のラジオドラマ。画家としてのタルコフスキー。「苦悩の芸術家」は、アメリカかぶれの青年だった―学生時代につくられたハードボイルド映画「殺人者」をはじめとする初公開資料とともに、実の妹や友人たちの肉声でつづる、世界を代表する映画作家の知られざる生涯。
目次
1 幼年期の幸せと悲しみ
2 不良少年から自殺志願の青年へ
3 映画大学での日々と幻の処女作
4 希望にみちた映画人生の始まり
5 ソビエト体制とタルコフスキーの確執
6 亡命と遺作「サクリファイス」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
匠
74
僕は今まで最新作の映画より、古いものばかりを観てきた。そんな中、とびきり強烈な個性を放っていたのがアンドレイ・タルコフスキーの作品の数々。カメラを固定した長回しが多く、セリフ数や動きは極力少なく、音楽もたまにしか入らない。夢の中にいるような静寂と心の中を旅しているような孤独感。ついウトウト居眠りして、しばらくして目を覚ますと、まださっきの場面なのに時計は10分経ってたりする。そんな映画を撮る彼の、知られざる多くの一面を知ることができる1冊だった。学生時代に作ったというハードボイルド映画、すごく観てみたい!2013/08/20
Bo-he-mian
14
1996年にNHK教育テレビで放送されていた『未来潮流』という番組の「タルコフスキー その始まりへの旅」での取材を元に、ディレクターの馬場朝子氏が書籍化したもの。タルコフスキー「最大の理解者」である妹、学生時代の友人だったアンドレイ・コンチャロフスキーをはじめとする、タルコフスキーの若き頃を知る人々の証言集で、評論などでは知る事ができない様々な側面が垣間見える。番組の内容と重なる部分もあるが、番組からカットせざるを得なかった貴重な証言も多く、タルコフスキーについて知りたい人は絶対に押さえておくべき本。2022/05/12