内容説明
夜の病院の当直室。若き女性精神科医が、眠れぬままに自転車をこぎだす。患者たちの〈妄想世界〉との接点を求め、分析哲学の〈可能世界意味論〉へ向けての旅。やがて眼前には、多数にして多様な世界がひろがりはじめる―。心理学、哲学、ファンタジーをかろやかに越境しながら紡ぎだす〈世界〉の新しい姿。
目次
夜の自転車
私の〈自転車的転回〉
香水をラクロワにしなかったなら
誘惑するなら停車中に
幸せと不幸せの切片のサンドウィッチ
高速道路とグッド・ナイト・コール
まぶたを閉じても眠らない
シチリアの黄昏の月
ピアソラ水平奏団の熱死
三連画の継ぎ目とダブリンの綻び目
ヘルメットのある路肩〔ほか〕