内容説明
幕末期、隆盛を誇った久保田藩直轄の鉱山、院内銀山に名物医がいた。文人にして趣味人、酒好きの風流人、名を門屋養安という。患者と聞けばいとわず呼ばれ親身に施療。日本で初めて秋田で行われた種痘術などを横軸に、さまざまな人間模様を練達の筆致で描く傑作小説。
感想・レビュー
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雨猫
9
江戸末期に秋田 久保田藩の院内銀山で活躍した医師 門屋養安の日記をもとにした小説。日本一の銀山なのでヤマはかなり潤っていたんですね。とはいえ飢饉もあるしヤマ特有のヨロケ(珪肺)もあるし当時は死病だった疱瘡もある。実際養安も孫を疱瘡で亡くしている。その無念さから養安は息子夫婦と共に種痘の普及に力を尽くす。ヤマの人々に尊敬され慕われる養安先生の人柄が素敵。同氏の「ガモウ戦記」でも思ったが秋田って本当におおらか。江戸から戊辰戦争まで、院内銀山の歩みを知れる一冊。☆4.32016/01/05
郭公太
2
養安先生とその家族を見ていると、母方の祖父の家を思い出す。 祖父とその家族も酒宴が好きで、子どもの頃母に連れられて遊びに行くと、必ずと言っていいほど酒宴が始まる。 水屋(台所)では、祖母、義叔母、母が酒の肴の準備をしている。 庭で放し飼いされていた鶏を使ったお吸い物、裏のたなぎ(生け簀)で育った鯉のあらいや甘煮等々がお膳に並ぶ。 ほとんどが自家栽培の食材である。 酒宴も興に入ってくると、民謡のオンパレードとなる。 そしてどこからか、「あばー、踊れー」と声が掛かると、祖母が手ぬぐいを頭に登場し手踊りが披露さ2016/07/18