ムーブ叢書
ジェンダー白書〈4〉女性と少子化

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  • サイズ A5判/ページ数 352p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784750323138
  • NDC分類 367.2
  • Cコード C0336

出版社内容情報

好評のシリーズ第4弾では、現代日本社会が直面する「少子化」問題をテーマに取り上げる。国や企業による対策を検討し、若者や女性の能力発揮、男女共同参画の必要性を考える。今後の日本社会の行方を考えるうえで欠かせない一冊。

はじめに(羽瀬川順子)
特集 女性と少子化
 〈総論〉少子化と男女共同参画(江原由美子)
 家族主義政策の帰結としての超低出生率(落合恵美子)
  ――家族サポート・ネットワーク再編成の失敗
 少子化時代における父親の子育て参加促進の方向性(松田茂樹)
 少子化時代の子育て支援の現状と課題(藤岡佐規子)
  ――北九州市の保育・子育て支援の現場から
 〈インタビュー〉多様な生き方の選択肢「シングル・ファーザー」(宮本和知)
 「少子化対策」の変遷(杉本貴代栄)
  ――九〇年代の少子化対策を検証する
 少子化問題と政策(堀江孝司)
  ――社会保障・税制・労働力供給
 少子・高齢社会を主体的に生きる(冨安兆子)
 〈コラム〉不妊治療――その進歩と問題点(香山リカ)
 両立支援と企業の役割(佐藤博樹)
  ――子育て支援から両立支援へ
 少子化社会における企業の役割(岩中弘暢)
  ――男女がきらめく企業をめざしたTOTOグループの事例をもとに
 忘れられた若者たち(竹信三恵子)
  ――「出産予備軍」無視で進む少子化対策
 〈フロム『カティング・エッジ』〉少子化社会克服と男女共同参画(汐見稔幸)
 〈コラム〉女性間の格差拡大――均等法時代のパラドックスとフェミニストの新たな課題(山田昌弘)
 女性と科学・技術(室伏きみ子)
  ――二一世紀少子時代における女性科学・技術者への期待と可能性
 〈インタビュー〉仕事と恋愛/仕事と子ども(倉田真由美)
 少子化と男女共同参画センターの役割(力武由美)
書誌情報
 キーワードでつかむジェンダー問題最前線
資料集
少子化関連法文書
地方自治体・企業による両立支援策一覧
索引
執筆者紹介

はじめに
 北九州市立男女共同参画センター“ムーブ”は、男女共同参画社会の形成の推進に関する施策を実施するとともに、市民および民間の団体による男女共同参画社会の形成の推進に関する取り組みの拠点となる施設として、一九九五年の開所以来一一年間さまざまな事業を展開してまいりました。『ムーブ叢書 ジェンダー白書』は、その事業の一環として、二一世紀の最重要課題である男女共同参画社会を実現するうえで障害となるジェンダー問題を明らかにし、解決の方向性を探ると共に、国内はもとより国外に向けて情報発信をすることを目的として、刊行してまいりました。
 さて、昨年二〇〇五年一二月には、男女共同参画社会基本法に基づき策定された第一次基本計画期間中の取組を評価・総括し、めざすべき社会の将来像に留意した「男女共同参画基本計画(第二次)」が策定されました。そのなかで、「ジェンダー」は社会通念や慣習の中にある女性像、男性像といった「社会的性別」と定義され、社会的性別が性差別、性別による固定的役割分担、偏見等につながっている場合があり、社会的につくられたものであることを意識していこうとするものが「社会的性別の視点」として明確にされました。また、具体的施策として、「社会的性別」(ジェンダー)の視点の定義の誤解の解消に努め、恣意的運用・解釈が行われないよう、わかりやすい広報・啓発活動を進めるとともに、「男女共同参画社会」の用語の周知度を二〇二〇年までに一〇〇%にすることが示されました。
 このようななか、社会においてはジェンダー・フリーをめぐる誤解や恣意的運用・解釈、あるいはまた女性の社会参加・就業を支援することが少子化をさらに加速するなど少子高齢社会への危機感から生じるさまざまな議論が錯綜しています。そもそも日本における少子化は一九九〇年代以降少子高齢化の急速な進展と共に浮上し、将来の労働力不足、社会保障負担の増大、高齢者介護の問題などの解決に向けて具体的な対策を必要とする「社会問題」として注目されるようになりました。また、二〇〇五年一二月に出された総務省の国勢調査人口速報値でも、日本の総人口が二〇〇五年度において初めて減少することが判明し、将来のわが国の社会経済活動の基盤の脆弱化が危惧され、男女が性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、社会全体の最重要課題として緊急性を増してきました。
 そこで、二〇〇五年度の『ムーブ叢書 ジェンダー白書4』は、「女性と少子化」を特集テーマに組み、高齢社会をも視野に入れつつ、少子化という現象を「男女共同参画」という視点で切るとそこにどのようなジェンダー課題が見えてくるのか、またその課題を克服するにはどのような方策があるのか、各分野で研究者としてあるいは実践・運動家として少子化に取り組んでいらっしゃる多様な執筆陣に、さまざまな立場から分析・展望した示唆に富む情報提供や政策提案をいただいています。特に、北九州市の地元企業の少子化への積極的な取り組み、保育現場から見た子育て支援の今日的課題、子育て支援をはじめとする社会経済活動への高齢者の主体的参画事例などを、ローカルな地点からグローバルな視点で情報発信しています。
 さらに、本号においては新たな試みを二つしています。一つは、インタビュー記事の掲載です。客観性・論理性・普遍性を探求する科学的な書き物では取りこぼされてしまう個別の「声」(voice)や「語り」(narrative)のなかに潜む真実を伝えていこうという試みです。今現在シングル・ペアレントとして、子育てをしながら豊かなキャリア形成を実践していらっしゃる宮本和知さんと倉田真由美さんの生の声から、仕事と子育ての醍醐味を感じ取っていただけることと存じます。二つ目の新しい試みは、少子化に対する日本全国の取り組みの動向を俯瞰図にして情報提供していることです。次世代育成支援対策推進法に基づいた行動計画の策定はどこまで進んでいるのか、各地域や各組織の特性や目標がどのように反映された行動計画になっているのかを一目で掴むことができ、またホームページアドレス一覧から各自治体やファミリーフレンドリー企業表彰受賞歴のある企業の行動計画へアクセスすることができます。
 本書が、男女共同参画センター・女性センターや地方自治体において男女共同参画行政にたずさわる方々をはじめ、ジェンダー問題について関心のある方々、ジェンダーを学んでいる学生や研究者の方々にも広く活用していただき、「男女共同参画」や「社会的性別」(ジェンダー)が正しく理解され、男女共同参画の推進の輪が広がっていくことを願っています。
 最後に、本書発刊に際し、貴重な専門的知識や研究に基づく洞察をご提示くださいました執筆者の方々、情報提供に快くご協力くださいました日本全国の各自治体、企業の方々、インタビューに快く応じてくださいました方々、その他多くの方々のご協力を得て、今日の社会全体が高い関心を寄せるテーマ「女性と少子化」を特集した『ムーブ叢書 ジェンダー白書4』をここに刊行する運びとなりましたことは大きな喜びでありますとともに、関係各位に深く感謝し、お礼を申し上げます。

二〇〇六年三月
北九州市立男女共同参画センター“ムーブ”所長 羽瀬川順子

目次

総論 少子化と男女共同参画
家族主義政策の帰結としての超低出生率―家族サポート・ネットワーク再編成の失敗
少子化時代における父親の子育て参加促進の方向性
少子化時代の子育て支援の現状と課題―北九州市の保育・子育て支援の現場から
インタビュー 多様な生き方の選択肢「シングル・ファーザー」
「少子化対策」の変遷―九〇年代の少子化対策を検証する
少子化問題と政策―社会保障・税制・労働力供給
少子・高齢社会を主体的に生きる
両立支援と企業の役割―子育て支援から両立支援へ
少子化社会における企業の役割―男女がきらめく企業をめざしたTOTOグループの事例をもとに
忘れられた若者たち―「出産予備軍」無視で進む少子化対策
フロム『カティング・エッジ』 少子化社会克服と男女共同参画
女性と科学・技術―二一世紀少子時代における女性科学・技術者への期待と可能性
インタビュー 仕事と恋愛/仕事と子ども
少子化と男女共同参画センターの役割