出版社内容情報
初代古河公方で知られる足利成氏。その人生の半ばは、享徳の乱など戦乱の中にあった。この戦ばかりの生涯というイメージを、確かな史料により見直す。断絶した公方家再興の軌跡や再建した鎌倉府の内実、下総古河に建てた新体制の実態を解明。自然環境や宗教・文化との関わりにも触れ、成氏の新たな側面を明らかにしつつ実像に迫る注目の一冊。
内容説明
初代古河公方となった足利成氏。享徳の乱など戦うばかりの生涯というイメージを再考する。崩壊した公方家と鎌倉府の再建、下総古河に建てた新体制の実態を解明。自然環境や宗教・文化との関わりにも触れ新たな実像に迫る。
目次
第1章 父・兄たちの悲劇と成氏の生い立ち
第2章 成氏の復帰と鎌倉公方就任
第3章 鎌倉府の再建
第4章 成氏と享徳の乱
第5章 古河府体制の形成
第6章 成氏をめぐる自然・社会・文化環境
第7章 それからの成氏
終章 花押に見る成氏の人物像
著者等紹介
市村高男[イチムラタカオ]
1951年茨城県に生まれる。1983年東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学、博士(史学)。現在高知大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
12
古河公方の初代・成氏の評伝。享徳の乱を起こし、鎌倉を追われた公方ではなく、古河を拠点に新たな体制を築いた人物として、かなりポジティブに成氏を評価しているのが印象的。著者は、成氏を政治的な柔軟さは持ちながらも、信念を貫く頑固さを持つ人物と読み解く。古河という新天地に身を移しながらも、一度は断絶した公方家の再興に尽くした生涯は、確かに一本筋が通ったようにも思える。敵対する上杉氏や京都の幕府が内紛だらけなので尚更である。いずれにしても関東戦国史の幕開けを飾る大人物には違いない。2022/10/28
ナタネ油
5
足利成氏を中心に、政治・経済・都市・文化など様々な面から総合的に捉えた中世後期東国史論。各分野の近年に至る成果を取り入れつつ、新見解を打ち出している。一つの到達点。2023/03/01
フランソワーズ
3
享徳の乱、東国戦国史の黎明期等の文脈で語られることの多い古河公方足利成氏。また、父持氏の仇上杉憲忠を謀殺して私怨を晴した、好戦的な公方のような印象が強い成氏。しかしその事績をつぶさに見てくると、政だけでなく、寺社政策など、あらゆる方面への優れた手腕が見て取れる。著者いわく、関東の公方家を再興したといえる成氏の評伝として、とても読み応えがありました。2023/04/08
竜玄葉潤
1
関東の城を巡っていると、結構な確率で成氏に行きつく。そんなところから気になっていた人。歴史としてはよく理解できたが、人となりは分からん。その面は小説の方が良いかも。あるかな?2023/03/14