内容説明
堕落した女帝と評価されてきた孝謙=称徳天皇。その復権を目指し、皇位継承問題や道鏡との関わりなど、錯綜する歴史を解きほぐす。新しい観点から宇佐八幡宮神託事件の真相と、皇統にたいする苦悩の決断を究明する。
目次
父と母たち
内親王の立太子
女帝の歳月
淳仁との対立
法王との「共治」
宇佐神託事件の真相
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
俊介
14
孝謙天皇についての通説を見直した本だ。「宇佐八幡宮神託事件」や、「怪僧」道鏡との関係性など、ともすればスキャンダラスな女帝というイメージで語られがちな孝謙天皇。しかし著者は、彼女の全体の人生を振り返り、また資料を独自に読み解くことで、先入観に囚われない歴史の見方を提示する。天皇家の長女として生まれ、運命の巡り合わせで女性天皇となった孝謙は、独身を貫き、天皇としての務めにまさに生涯を捧げることになった。人知れぬ孤独感も抱えていたに違いない。2021/10/05
印度 洋一郎
3
とかく、道鏡との艶聞(著者によると"道徳的偏見")絡みでゴシップ的な扱いを受ける、奈良時代の女帝の実像に迫ってみようという本。話を父親の聖武天皇から起こしているが、この父に男子の跡継ぎがいなかったことが全ての始まり。何としても血統(草壁皇統)を繋ぐべく、前例を無視して独身女性の天皇が誕生する。つまり、女帝は即位時から周囲から支持されない孤独な存在だったということ。それ故、数少ない理解者となった道鏡に入れ込んでしまったのだが、著者からすると艶聞にされたのは偏見にせよ、統治者としては脇が甘く、自業自得の面も。2011/12/10