内容説明
鎌倉政権確立期の執権北条義時に対しては,従来史家の批判は厳しかった。しかし義時は果して悪逆者か? 源氏の正統を根絶し,承久の乱には三上皇を遠島に流したことは事実だが,当時の人心に映じた義時の姿はどうか。新しい時代の,透徹した史眼によってのみなし得る義時評とその生涯,繰りひろげる絵巻の如き妙味を綴る。
目次
1 江間の小四郎
2 源平合戦と義時
3 頼朝と義時
4 政治的生涯の始まり
5 北条氏の擡頭
6 北条父子の相剋
7 執権義時の政治
8 公武関係の推移と実朝の死
9 朝幕関係の危機
10 承久の乱と義時
11 執権政治確立への途
12 人間義時とその子女
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kiyoshi Utsugi
33
著者の安田元久氏は、元学習院大学の学長だった方で、今の天皇陛下が学習院大学の学生だった頃に論文の指導教官を務めた方です。 鎌倉時代を専門とされているようです。 北条義時は、承久の乱で勝利をおさめ、天皇を廃嫡し、三上皇を配流にしているので、明治から戦前にかけては逆臣義時という評価でした。 江間の小四郎時代から承久の乱で勝利をおさめ、その3年後に62歳で亡くなるまでを描いてます。 行動は大体において常識的であり、失敗が少なかったとしています。 大河ドラマではどんな義時として描かれるのか楽しみですね。2021/09/14
MUNEKAZ
8
もとは1961年刊行の一冊。ミネルヴァの評伝や最近の本を読むと情報は詳しいが、その人物の輪郭は霞んで見えることが多いのだけど、こちらは逆に物語として義時を主人公に据え、テンポよくまとめてあって読みやすい。単純に義時が何を成した人物なのかを知るにはこちらの方が良いかも。「頼朝の後継者」「新しい時代を開いた人物」として、穿ってみれば戦前までの逆賊イメージを廃するために、碩学が書いた啓蒙の書という感じ。2015/12/07
どんたこす
6
少し古いが、ゴリゴリの歴史書ではなく、鎌倉殿の13人の世界観を補完するのに最適で、楽しみながら読めた。2024/01/31
綱成
6
年表、義時の生涯、事象の意義と背景をノートに書きながら、読了しました。こういう楽しみ方もあるなと発見。義時については、思想的にも行動的にも、正統な頼朝の後継者という印象です。東国の武士である北条氏でありながら、東海道に近く西国の情報にも通じ異質であったこと。その中で東国の武士が思う独立を叶えたことから立場的にも頼朝に近い存在だったと感じました。まだまだ、調べたりないので暫くは、この時代を中心に読んでいきそうです。2015/07/27
綱成
5
炎環や鎌倉関係の本を読み、北条義時という人物に興味があり読み始めました。父や同僚を失脚させ、天皇に刃を向けるとみると冷酷非道な人物、典型的悪役に捉えられますが、武家社会の確立の志を観点にみると北条義時という人物は、志を貫く好感の持てる人物、英雄と捉えることも出来ます。複雑な人物ですが、読了し満足です。2015/06/20