内容説明
構造変動の渦中にある今日の東アジアを理解するためには、国別に一色で均質に塗り分けられたような、これまでの世界地図だけでは足りない。従来「辺境」視されていた地域が、活発に自らの地域の論理を主張して、変動の推進力となっていたり、そこにはさまざまな地域的枠組が錯綜してきている。地域に内在する論理を生かしつつ、これからどのような地域秩序が構想できるか、そのヒントを、十九世紀における東アジア国際秩序の構造変動に焦点をあてて探ってみる。
目次
中華世界の現在
1 東アジアの伝統的国際秩序
2 東アジアにおける近代世界の登場
3 中華世界による近代世界の包摂
4 中華世界の「近代」的再編
5 中華世界の崩壊と新時代
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
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最近、自分の国籍だとか市場経済というシステムを自明視して、世界がよく見えていないことにふと気づく瞬間がある。例えば「格差社会」というけれども、日本国籍というだけで(あまり好きな言葉ではないが)「勝ち組」という事実を忘れがちだったりする。この本を読むと、東アジアにおける近代の始まりは、従来の東アジアの国際関係システムと近代主権国家システムがいかに相容れないか、というのがよく分かる。その点、やはり「歴史は常に現代史」(EHカー)。中国やイスラム諸国をみれば、近代化の問題は過去の問題ではないということに気づく。2020/01/03
こずえ
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東アジアの国際秩序は外の世界である欧米列強との関係性とはきっても切り離せない。こんなダメなアジアは見捨てて欧米のようになろうとかアジアで連携しようとかいろいろ考えた明治初期の日本人の思想(脱亜論など)と合わせてよむと理解が深まり面白い
tabasco
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西欧的秩序とは異なる、かつて東アジアに存在した、もう1つの「近代秩序」を知る上での入門書2009/04/16
Omata Junichi
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清が新疆などで領域支配を強化した政策は、日本が蝦夷地などで行った領域支配の強化策とすごく似ているなというのが、読んでいての感想。そこから思ったのは、日本史だけだとどうしても内陸アジアへの視点が欠けがちで、本書でいう「東南の孤月」くらいしか視野に入ってこなくなるということ。そうすると、中華帝国の領域支配のあり方と近世日本の「日本型華夷秩序」(や朝鮮とか)が重層的に重なって支配秩序が形成されているということを見落とすんだなと。みずからがいかにオリエンタリズムを内面化しているか、を感じさせられる。2020/06/27
三城 俊一/みきしゅんいち
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アヘン戦争をきっかけとして、東アジアが激動の近代史にはいったことはよく知られている。しかし、アヘン戦争以後清が列強の侵略を受けるようになったばかりではなく、国際関係の考え方を根本的に変えた歴史的意義もあるという。19世紀の東アジアは、近代以前の華夷秩序から西洋式の主権国家体制への転換期だったのである。それに適応できなかった清や朝鮮と、西洋の論理に順応した日本でその後の歩みも変わっていく。本書では、日本であまり知られていない新疆の動向にも字数が割かれており興味深い。2018/10/18