内容説明
「凡常」とは、いわば日々を生きる私たち自身の姿である。夏目漱石・谷崎潤一郎・太宰治他の代表作を前に、近代文学がすぐれた作品の力によってあらわしてきた「凡常」のかたちを巧みに掴みとり、誰でもが「読み」うる小説世界をあらたなひろがりの場として開放する“等身大の小説論”。
目次
「凡常」の受けとめ
津田の「余裕」、『明暗』のおかしみ
『明暗』の面白さ、わかりやすさ―「対」の世界
『道草』の味わい―「迂闊な健三」と「捨てられた父」
啓蒙と疎隔―『野分』
「伝聞」と「忖度」のひろがり―『細雪』
「持続」と「収束」―『細雪』大尾
紳士たちの物語、夫婦和合譚―『細雪』から『明暗』へ
『人間失格』の「人間肯定」―語りのサービスと笑い
「凡庸の人物たち」の悲喜劇―太宰治『お伽草紙』〔ほか〕