内容説明
七代目小川治兵衛(一八六〇~一九三三)作庭家。山縣有朋の無隣庵、住友春翠の慶沢園など後世に受け継がれる名園を作庭した七代目小川治兵衛(屋号植治)。「眺める庭」から「五感で味わう庭」への転換を図り、時代を越えて愛される近代日本庭園文化を創り上げた。作庭家でもある著者が語る近代京都と植治の物語。
目次
序章 京都の近代化と植治
第1章 近代庭園の濫觴
第2章 公共空間の庭園化
第3章 作風の確立
第4章 植治の展開を支えた白楊
第5章 最大の施主・住友春翠
第6章 近代数寄者と植治
第7章 植治の晩年
終章 植治と近代庭園
著者等紹介
尼崎博正[アマサキヒロマサ]
1946年兵庫県生まれ。1968年京都大学農学部卒業。京都の植木屋で修業したのち、1989年京都芸術短期大学教授。1992年農学博士(京都大学)。日本造園学会賞(設計作品部門)受賞。京都芸術短期大学学長、京都造形芸術大学副学長を経て、京都造形芸術大学教授、京都造形芸術大学日本庭園・歴史遺産研究センター所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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umeko
11
莫大な費用のかかる庭を次々と手がけることのできた時代背景と共に、七代目小川治兵衛の庭に対する観念や感性といった部分が興味深かった。2014/10/18
chang_ume
4
抜群に面白かった。作庭家にして植木屋「植治」の屋号を持つ七代目小川治兵衛の個人史を通して、「近代数寄空間の創出」を描き出しています。優れた眺望、降り井、竹材の多用といった「煎茶」への傾倒が、近代数寄人に共通した文化空間を用意したこと。近代日本の庭園文化について色々謎が解けました。これまでのフィールドワークでの発見に納得が得られたような。そして、水車から水力発電へと動力源の急激な変化によって、工場用地が巨大別荘群に転生を遂げた南禅寺一帯は、「近代数寄空間」が母胎としたダイナミズムを体現するかのようですね。2017/11/20
kan
1
南禅寺界隈別荘群をはじめ明治期の近代日本庭園の潮流を作った植治の作庭伝記。人となりや開発経緯、施主との関係は詳細にわたり現代へ到る近代日本庭園の黎明を俯瞰できる。2013/10/13