内容説明
本書は芥川龍之介の幼少期からの中国文学とのかかわりを検討し、中国旅行をはじめとする中国体験が、この作家にいかに大きな意味を持つか考えたものである。大正10年、大阪毎日新聞社の視察員として中国を遍歴した芥川の120余日を、第一人者が著作や書簡集、フィールドワークから丹念に検証。その文学的成果とジャーナリスト精神のありかを、独自の視点から読み解く。
目次
第1章 中国文化へのまなざし
第2章 中国への夢
第3章 動きつつある中国
第4章 特派員芥川龍之介
第5章 苦難の旅立ち
第6章 場違いの西洋―上海
第7章 大まかな自然―杭州・蘇州・南京
第8章 長江をさかのぼる―蕪湖・廬山・長沙
第9章 王城の地―北京
第10章 中国体験のもたらしたもの
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HIRO1970
26
⭐️⭐️⭐️実に興味深い内容でした。芥川龍之介が大阪毎日新聞の特派員として4カ月中国を旅した際の夥しい量の手紙及び帰国後の作品群から彼が当時何を視てどう感じていたかに肉迫します。この時からもう間もなく100年の時が経ちますが、私が中国現地で感じた想いや感情に全く同じ様に符合することが多く、喪失感に似た寂しさとある種の嫌悪感にも頷けました。この国はずっと会えなかった爺さん婆さんみたいなもので実際に見てしまうと結構嫌な所が急に見えて来て憧れが幻滅に転化してしまうのが近代日本人のパターンなのかも知れません。2015/05/01
GaGa
8
大正時代、大阪毎日新聞社の特派員として中国に渡った芥川龍之介のジャーナリストとしての側面を描いたノンフィクション。菊地寛が同期入社というのも面白い。文豪の意外な側面が見れるが、一番重要な、中国での体験が彼に何をもたらしたのかを書かれた第十章がやや期待はずれ。もっと掘り下げた何かを提示してくれるのかと思っていた。しかし芥川龍之介研究や論文を書かれたい方は是非ご一読を2010/06/23
rbyawa
2
i022、大正9年の抗日運動が残るような大陸中国に派遣された時代前後の芥川龍之介の本で、まあ…気になるところはあったものの資料に関しては忠実なんじゃないでしょうか…。というか昔から回覧雑誌をやっていて、休みのたびに学友たちと旅行をしていたって初めて読んだかも…いや、孤独な人生って語られてたのは何回も読んでるけどね…。この時代は周囲にもぽちぽち名前を知られていくような学友多く、付かず離れずの関係といったところ。中国行きは体調崩しただなんだと否定的なことを言われているものの、同時代の評価はどうだったのかしら。2018/07/08