出版社内容情報
デリダによる待望のジョイス論。英文学史上の難解作品として知られるその二著『ユリシーズ』および『フィネガンズ・ウェイク』をめぐっての言語論的・哲学的考察。
目次
ジョイスに寄せるふたこと
ユリシーズグラモフォン―ジョイスが「然り」と言うのを聞くこと
著者等紹介
デリダ,ジャック[デリダ,ジャック][Derrida,Jacques]
1930年アルジェに生まれる。パリのエコール・ノルマル・シュペリウールで哲学を専攻。同校哲学教授を経て社会科学高等研究院教授をつとめる。ロゴス中心主義の脱構築を提唱し、「神の死」のあとに到来した今日の知的状況をこの上なき冷徹な眼で分析する現代フランスの代表的な哲学者
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感想・レビュー
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Ecriture
5
ジョイス作品における"oui"の郵便論的分析。あるいは心的電話メディア論。『声と現象』はやっぱり電話と強く関係してたんだなーと再確認。この辺はキットラーと影響し合ってるね。この本で印象的なのはジョイス研究者に初め下手に出ていたデリダが後半強気に切り替えて「おめぇら専門家じゃねぇから」とぶちまけるトコ。そのために長い時間かけてまわりくどい話し方するわけ。また一つ彼の手の内が分かった。2009/05/19
Gakio
3
初デリダ。だが、哲学書ではなく、ジョイスの専門家ではない著者の講演録。したがって例えば大江健三郎が加藤周一の仕事について講演したもののテクストと同じで、これを読んだからといってデリダの仕事が読めたことにはならない(作品、術語へのインスピレーションの言及はある)。 『フィネガンズ・ウェイク』の「he war」の翻訳不可能性についてと、『ユリシーズ』の「yes(oui)」について。ならびにジョイスの「署名」と「笑い(イロニーを含んだ)」 以下感想。 「うんうん、やっぱり『ユリシーズ』って面白いよね!」2020/07/06
NICK
2
この本については「HE WAR」の翻訳の問題、またジョイス産業について論じたフィネガンズ・ウェイク論の方しか知らなかったのだが、表題講演もかなり興味深い内容だった。「oui/yes」の言語行為性/書字音声性/遠隔音響性/郵便的差延について、あの遠回しなデリダ節で論じている。ウィは既にコミュニケーションの中に予言(プログラム)されているということ? 反復可能性としてのウィ。ウィへのウィ。言語行為(約束する/約束を記憶する?)のなかで自らへと送り返される郵便的ウィ…… 2012/01/16
Z
1
これは難しい。一度カント、ローゼンツヴァイクにもどり、そこからまたよみなおさないと。2014/03/18