出版社内容情報
アーレント『カント政治哲学の講義』を出発点に,ガダマーの解釈学を援用してアリストテレスを検討しつつ,政治の本質をその根底をなす言語.熟慮.判断力に探る。
目次
第1章 政治的判断力とは何か
第2章 探究のさまざまな道(アーレント:ガーダマー;ハーバーマス)
第3章 カントの趣味概念
第4章 アリストテレスの思慮の概念
第5章 判断力と弁論術(アリストテレス;カント)
第6章 共感と公平―包括的パースペクティヴの地平
第7章 政治的判断力の理論のために
感想・レビュー
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てれまこし
12
理論知を所有する専門家支配と「人それぞれ」の私的な趣味領域に引き裂かれて、共通感覚に基づく判断力を行使する公共圏は消失した。アレントもガダマーもローマ的ヒューマニズムの伝統を引き継ぎ、市民的公共性の再生を図る。だが、アレントはカントの美的判断力批判に主観を越える判断領域の可能性を見いだそうとする一方、ガダマーは共通感覚を知性化しその政治的・社会的意義を剥ぎ取ったとカントを批判し、アリストテレスの思慮に依拠する。判断力は認識(知識と呼ばれるようなもの)を必要とするか、判断力を行使するのは観照者か行為者か。2021/08/02