内容説明
猫のように鳴くビエンチェンの虫、悟りを与えるネパールの空気、湾岸で闘った遊牧民(ノマド)の末裔たち、闇に消えたエルサレムの黒い枢機卿、光の塊となって飛ぶアマゾンの蝶、演出された平壌の日常、果てしなく蒼いモルディブの月光、シチリアの若々しい黎明の物語、ミルフォードトラックの翡翠色の散歩道、象に導かれてのチトワンの秘密の庵、すべてに光と影を生むブエノスアイレスのタンゴ、いのちの価値を知るチベット巡礼、ラップランドの氷のバー、恐れるもののない南極の生き物…日本を代表する旅館、世界有数のリゾートから紛争地帯、エベレスト、そして南極まで。言葉の魔術師として雑誌界を風靡する著者がその文学的出発点である詩人に還って紡ぐ珠玉の酔中吟遊行。
目次
1章 酒。娼婦。戦争。その時ぼくはそこにいた。(ぼくはいま、河を渡る。―ノンカイ‐タイ;湿度のある幻覚。―ビエンチャン‐ラオス ほか)
2章 南方吟遊詩人の戯れ。(昏いか‐スリランカ;その地でぼくは癒される‐スリランカ ほか)
3章 美しき国のうつろいに。夢の仮り寝の、宿の夢。(屋久島―屋久島いわさきホテル・六月;沖縄―ホテル日航アリビラ・七月 ほか)
4章 南北の極圏を踏む。この惑星の貌、最後のかけらを探して。(蒼き午睡の向こう―マレ‐モルディブ;海の十字路、迷宮の島―シチリア‐イタリア ほか)