出版社内容情報
19世紀パリの風俗をナチュラルに描きつづけたエミール・ゾラ。本書は、その自然主義と写実主義を見きわめ、小説家ゾラの才能に迫る! 略年譜・小説全作品梗概一覧を巻末に収録。
内容説明
19世紀のパリの風俗をナチュラルに描きつづけたエミール・ゾラ。本書はその自然主義と写実主義とを見きわめ、精神分析学・哲学・構造論・テーマ論・神話論などによる豊富な研究成果をもとにしながら、小説家としてのゾラの才能に迫る。巻末には略年譜・小説全作品の梗概一覧などを充実収録。
目次
第1章 知性と精神の形成
第2章 理論上の自然主義
第3章 小説のレアリスム
第4章 物語の拘束と魅惑
第5章 テーマ系と想像世界
第6章 神話とイデオロギー
第7章 文章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
15
ゾラほど馬鹿にされ続けてきた19世紀の小説家も珍しいと思うが、そんなゾラが本当はどれだけすごい作家なのかということを簡潔にミットランさんが説明してくれる。ゾラの伝記でもなく、ドレフュス事件にはノータッチで、ひたすら彼の文学について。ゾラの文章とは対照的に?、非常に濃密でレトリカルな小著。こういうものでも読まないと、あの膨大な小説群の中でどこに目をつけたらいいのか迷ってしまう。催淫作用を持つ植物に、動物化する人間たちなども。「自然主義」と後世の人々によって平板化された既成概念を覆す。2016/07/09
mstr_kk
13
自然主義とリアリズムについて考えるために読みました。勉強になりました。写実主義は没個性的な現実模倣だが、自然主義とは作家の個性的な才能を通して現実を観察することである。自然主義とは、ゾラひとりの文学である。しかし自然主義の理論とゾラの実作との間にはちがいがある。ゾラの「自然」には、社会的現実と人間の生命、そしてリビドー的な肉体性が含まれる。ゾラが「実験小説論」で打ち出した「実験」の理念は、自然主義にとっては付加的なものでしかなかったが、ゾラの行う物語の記号論的操作に対応している。詩は自然主義の埒外。2017/01/16
きつね
4
p.54,100あたりの腹、胃についての記述が面白い。〈「欲求」「野心」「享楽への渇望」は、「作品の進行についての概括的な覚書」のなかではほとんど同義的な表現になっており、ともかく相互に分かちがたく結びついている。(…)吸収、消化、それに排泄のテーマは、『パリの腹』では腸詰の製造がその中心的な換喩的文彩となり、『居酒屋』では蒸留器や脂肪を詰めこまれた鵞鳥の象徴を伴っているが(…)つまるところつねに不安をひきおこす。〉p.141の〈ゾラの小説においてはつねに「物の味方」が語の氾濫に押し流されてしまう時がある2013/06/21
Y.Yokota
0
筆者が序文で述べているように、この書の目的は「伝記的な研究」ではなく、「文学的形成と小説の着想、そして技法の検討」だ。ゾラを物語作者という観点から、素材から文章、語彙に至るまで"小説"そのものを深く掘り下げている。日本人に馴染みの無い他分野からの唐突な引用があるものの、訳注が加えられているので読みやすい。ゾラを評価するためにあれやこれや言うことは出来るが、一番は小説そのものが面白いということになるのかもしれない。2016/02/18
ねぼ
0
一度読んだだけでは理解の及ばない所がある。何度か読んで消化したい。2021/10/15