内容説明
深夜、ロンドンの街角でエンフィールド青年は奇怪な光景を目撃する。十字路で少女を平然と踏みつけ、高名な医師ジキル博士の屋敷に悠々と入っていく異様な男ハイド。彼は何者か?アタスン弁護士の疑念を裏付けるように、続いて殺人事件が…。『フランケンシュタイン』『吸血鬼ドラキュラ』と並び称されるホラーの古典的名作、新訳決定版。
著者等紹介
夏来健次[ナツキケンジ]
1954年新潟県生まれ。英米文学翻訳家
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感想・レビュー
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空猫
24
題名(あらすじ)だけ知っている名作古典の1つやっと読了。「ジキルとハイド」と言えば二重人格の代名詞だけれど、そうではなかった。100%の善人も100%の悪人も居ないということか。急速な科学の進歩への不安…人間はなにも変わってはいないのだ。そして解説に本作から派生した作品の紹介が多々あり、読みたい本がまた増えたorz2018/09/26
不識庵
24
「人間なんてのは、ひと皮むけばみんないっしょやでぇ」。もう10年以上前だろう。ある殺人事件の報道で、現場近くの寺の住職が言った。ハイドは相手が誰であれ、攻撃対象にするかもしれない。しかし、劇中凶行に及ぶ相手は温厚な、あるいは無垢な人物である。直視すると悲しいものがあるが、実際に抵抗する可能性が低い相手に対して、人は暗い衝動を破裂させやすい。最後のジキルの気づきが印象深い。一線を越える時の人には、子どもが玩具を壊す程度の理性しか働いていないという。大義名分を掲げるテロリズムもまた然り。2018/08/14
水生クレイモア
17
【ガーディアン必読1000チャレンジ】 海外古典ホラーの有名作。タイトルは二重人格の代名詞。ストーリーとしては「ハイド氏は何者か?」・「何故同じ建物に出入りしているのか?」という謎が提示され、最後の手記で真相が明かされる。読後感はホラーというよりミステリに近かった。2016/03/18
roughfractus02
10
都市化、速度化、情報化で分割不能な個人Individualなる概念に危機が訪れる時、意識の外に無意識が広がり、欲望が一人歩きする夢と現実の曖昧な物語が出てくる一方、無意識を知り尽くして真実を探る探偵や精神分析医が現れる。が、この19世紀末的小説が示唆するのは、意識と無意識による個人の分割にとどまらない。ジキルとハイドを同一人物と判断させる折れたステッキ、メモの筆跡の類似、そして手紙という物証はまだ同一性を保持している。この小説が仄めかすのは証拠が物から分離し、同一性概念から離れてデータ化する可能性である。2020/01/30
たむさん
7
本日の電車の中で。霧の都ロンドンの雰囲気にどっぷり浸かれて満足です。2019/02/28