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内容説明
第一次大戦という、人類史上初の大量殺戮戦争後、探偵小説は開花した―とする持論を克明に跡付け、正面から第一次大戦を通過しなかった日本においては、それが第二次大戦後にまで持ち越されたとし、『本陣殺人事件』に始まる探偵小説第二の波を体系立てる。横溝正史から大井広介、坂口安吾、山田風太郎、高木彬光、鮎川哲也、松本清張、中井英夫に至る画期的な戦後探偵小説論。
目次
序章 探偵小説という時代精神
第1章 論理小説と物象の乱舞―横溝正史論
第2章 世界戦争と不徹底な戦後―大井広介論
第3章 無意味と意味と無意味―坂口安吾論
第4章 廃墟と自意識の彷徨―山田風太郎論
第5章 屍体という錘と戦争体験―高木彬光論
第6章 柩の個性と匿名の死者―鮎川哲也論
第7章 壊れた人間と平和な現在―松本清張論
第8章 戦後探偵小説の内破―中井英夫論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風見鶏
2
卒論の参考文献。2014/12/18
v&b
1
栞。序章まで。戦争と探偵小説、十九世紀と二十世紀の死の違いについて。 なぜ探偵小説ほぼ全くの門外漢な自分が読んでいるかわからないが、おそらくは上遠野浩平や刑事・探偵ドラマあたりからの問題意識だろう。2018/10/06
osaru
0
探偵小説は、英米における第一次大戦、日本における第二次大戦の匿名の大量死を経験した後に、人間の死に固有性、特権性を取り戻す試みとして位置づけられる。 序章 クリスティ スタイルズの怪事件、一章 横溝 真珠郎 二章 大井広介 野球殺人事件 三章 安吾 不連続殺人事件 四章 風太郎 戦中派虫けら日記 五章 高木彬光 刺青殺人事件 六章 鮎川哲也 ペトロフ事件 七章 清張 点と線 八章 中井 虚無への供物2015/05/30
四四三屋
0
世界戦争という「大量虐殺」が探偵小説という形式を作り得たという論法は非常に面白いです。第一次世界大戦を経た欧州、第二次世界大戦を経験した特に東京大空襲後の日本で「本格」と呼ばれる探偵小説が、隆盛を極めたのもこれを読むと分かる気がします。あくまで分かる気がすると云うだけで、実際のところは首肯できない部分も無いではないのですが。例えば、個を極限まで抹殺した探偵小説において群衆という新たな時代の主役が登場した20世紀的世界で、「名探偵」という存在を必要としている小説形式として誕生せざるを得なかったのか、とか。2015/04/06
おちこち
0
再読。初読時とは異なり、ミステリ論というよりは探偵小説を介した戦後文学論といった印象を受けた。今から見れば論がやや粗いものの、現在でも提示された評論の質は衰えていないと思う。2013/02/17