出版社内容情報
高い見識に裏打ちされた時評は時代を越えて普遍性を持つ。政治から文化まで、二〇世紀後半からの四半世紀を、加藤周一はどう見たか。解説 成田龍一
内容説明
二十世紀日本を代表する知識人・加藤周一が四半世紀にわたって朝日新聞に連載した時評エッセイ。話題は、絵画文学映画から、故人を惜しみ、国際政治について論じるものまでを含む。豊かな知識と透徹した見識は、同時性を保ちながらも、時代を越え、現代に生きるわれわれが参照する価値がある。本巻は、連載開始の1984年から1991年までを収録する。
目次
1 1984
2 1985
3 1986
4 1987
5 1988
6 1989
7 1990
8 1991
著者等紹介
加藤周一[カトウシュウイチ]
1919‐2008年。東京生まれ。東京大学医学部卒。戦後、多彩な執筆活動を展開。カナダのブリティッシュ・コロンビア大学をはじめ、ドイツ、イギリス、アメリカ、スイス、イタリアの大学や、上智大学、立命館大学などで教鞭をとる。2004年、平和憲法擁護の「九条の会」の呼び掛け人となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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風に吹かれて
15
加藤氏は亡くなる直前まで、『夕陽妄語』と題して朝日新聞に毎月1度、国際政治や国内政治に関わる時事的な文章や芸術や文化などの時事的でない文章を書いた。本巻の国際政治に関するエッセイでは、ベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊、湾岸戦争などに触れ、米国追従から脱した外交を展開することを日本に求めている。そうしていれば、もしかしたら冷戦終結後核廃絶が進んでいたかもしれないと思う。そういった文章が書かれた30年後の日本の外交は、いっそう米国追従を強めているようにしか見えない。少なからず悲しみを持って加藤氏の文章を読んだ。2016/07/06
呼戯人
9
朝日新聞の夕刊で読み、今また文庫本となった夕陽妄語を読む。日本の言葉の真の意味でのリベラリズムの最良の成果を読むことの喜びは大きい。四半世紀に渡るエッセイの文章は短いがその思想の射程の長さまた適確さに驚く。もし彼がその国際政治上の洞察力を生かして、日本の指導者足りえたら、日本の戦後民主主義も少しは独立に向けて動くことができたかもしれない。こんな悪逆非道の新自由主義がはびこる世の中の出現を抑制することができたのではないかとも思う。日本の最良のリベラリズムの遺産はこの本の中に残っている。2016/07/06
やま
7
20年以上前の本というのに今を予想したかのような文章が続く。ということは結局変わらないのが日本という国なのだろう。日本の政治と戦後とアメリカと世界のこと。国内向けと海外向けの説明が一致しないこと。一神教と多神教とどちらも残酷であるという話も目新しかったし、仏教の国ごとの解釈の違いもおもしろかつた。オススメ。2017/05/13
けいしゅう
4
知の巨人・加藤周一の浩瀚な学識に圧倒されながら、短編エッセー集の気楽さでさくさく学べるお得な一冊。中でも友への哀惜が詰まった「ある自由人の死」が個人的に好き。各編を跨いで何度か繰り返される少数派の批判精神こそが創造性を生み、社会発展の鍵となるという主張が印象的だった。常に心に留めておきたい。2017/10/20
そうげん(sougen)
3
若者文化というカテゴリーを設けながら、地域や生まれ、身分や立場よりも、年齢や世代や性別などによって、集団の中で個別の特殊性が生じていく過程が描かれる冒頭の一説からしてぐっと惹きこまれました。この三冊は当時がどんな社会情勢であり、周囲の人たちがどんなことに関心をもち、どんな報道がなされていたか、異なる世代は戦前や、伝統や、芸術、あるいは仕事について、どんな意識を抱いていたかといった自分の中での印象を参照しつつ読むことで、甲斐ある読み物になるようでした。2018/06/23