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ちくま学芸文庫
死を与える

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  • サイズ 文庫判/ページ数 388p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480088826
  • NDC分類 135.5
  • Cコード C0110

内容説明

最愛の息子イサクを犠牲に捧げよと神に命じられたアブラハムはモリヤ山へと向かう。息子に死を与え、その死を神に与えようとした瞬間、その手は押しとどめられる。この二重の贈与の瞬間に何が起きたのか。この出来事が課す無限の分裂の中で、アブラハムはどんな責任を果たし、どんな倫理に従っているのか。そして、この出来事の記憶は、現代のキリスト教、ユダヤ教、イスラム教に何を伝えているのか。キルケゴール『おそれとおののき』、パトチュカ『異教的試論』などの詳細な読解を手がかりに、デリダがおそるべき密度で展開する宗教論。’90年代デリダの代表作。本邦初訳。

目次

死を与える(ヨーロッパ的責任のさまざまな秘密;死を―奪い取るべきものとして与えることと、与えることを学び取ることの彼方で;誰に与えるか(知らないでいることができること)
tout autreはtout autreである(およそ他者というものは/まったく他なるものは、あらゆる他者である/まったく他なるものである))
秘密の文学―不可能な父子関係(秘密の試練―“一者”にも“他者”にも;“父”と“子”と“文学”;“一”以上に)

著者等紹介

デリダ,ジャック[デリダ,ジャック][Derrida,Jacques]
1930‐2004年。アルジェリア生まれ。エコール・ノルマル卒業。西洋形而上学のロゴス中心主義の脱構築を企てた哲学者

広瀬浩司[ヒロセコウジ]
1963年生まれ。東京大学総合文化研究科卒業。筑波大学助教授

林好雄[ハヤシヨシオ]
1952年生まれ。東京大学仏文科卒業。駿河台大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

白義

14
デリダの倫理的な思索は、一見言葉遊びを使う浮世離れした思考に見えながら、読者自身が自明視する日常を堀り崩し、それを世界的な困難、アポリアと繋げて見せる。単独的で切れ目のない生に対する脱構築の試み。だけど、もちろんそれは新たなる思考の可能性を継ぎ、開くための作業だ。本書は旧約のアブラハムの逸話を中心にした、デリダの宗教論。あの、神に息子を捧げるという思考困難なエピソードを軸に、責任、贈与、秘密などの概念が論じられている2012/01/01

ラウリスタ~

12
日本では知られていないパトチュカの著作、それにキルケゴールのイサク献祭論などを下敷きにして、「与える」「死を与える」「他者」などに関して書かれている。キルケゴールはともかく、パトチュカなんて読んでいる日本人はほとんどいないだろうから、何が話されているのか分かりにくい。どこまでが、パトチュカの、ハイデガーの、レヴィナスの・・・考えであり、どこからがデリダ独自の考えなのか、混然としている。後半のイサク献祭、ノアに関する(キルケゴール的な)文章の方は、話題がはっきりしている分興味深く読みやすい。2013/05/16

磁石

7
 この内容の大部分を理解することはできなかったけど、読み進めていくうちに、今まで無意識のうちに信じていたものがガラガラと壊れて、新しく別のものが積み上がっていくのを感じた。アブラハムが息子のイサクを犠牲にして神にその死を捧げるということが、極限状態や特異現象でもなく、日常茶飯事で遂行され続けていると言う。そこを、日常的なことだと言い切れるほど骨の髄まで実感出来ていないから、理解できないのかもしれない。もう少し人生を過ごしたあとに、もう一度手にとって見たい。2013/04/01

Ecriture

6
アブラハムのエピソードから、人間的責任の彼方、すなわち譲渡不可能で絶対的な義務に応答し、「秘密」のうちに死を与えることを説く……。神が思い止まらせてくれてうまくいくという……。2012/01/30

Yuki

1
いわゆる「政治的転回」期の作品。表題作は、講演を基にしているからか、デリダという人物が現れ出る瞬間に、どこかむず痒さをおぼえる。/本書は宗教論でありながら、「倫理的なもの」との決定不可能性に目配せするが、やや「宗教的なもの」に軍配ありか。責任概念と、それに端を発する許し(赦し)の概念は、普遍性・公共性を排し、「秘密」のエコノミーに限定されざるを得ない。2017/06/01

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