内容説明
情報化の進行は、二〇世紀的な旧来の文化論を過去のものにした―。本書は情報化と日本的想像力の生む「新たな人間像」を紐解きながら、日本の今とこれからを描きだす。私たちは今、何を欲望し、何に魅せられ、何を想像/創造しているのか。私たちの文化と社会はこれからどこへ向かうのか。ポップカルチャーの分析から、人間と情報、人間と記号、そして人間と社会との新しい関係を説く、渾身の現代文化論。
目次
序章 “夜の世界”から“昼の世界”へ
論点1 クール・ジャパノロジーの二段階論―集合知と日本的想像力
論点2 地理と文化のあたらしい関係―東京とインターネット
論点3 音楽消費とコンテンツの「価値」
論点4 情報化とテキスト・コミュニケーションのゆくえ
論点5 ファンタジーの作用する場所
論点6 日本文化最大の論点
終章 “夜の世界”から“昼の世界”を変えていくために
付録 『日本文化の論点』を読むキーワード
著者等紹介
宇野常寛[ウノツネヒロ]
評論家。1978年、青森県生まれ。企画ユニット「第二次惑星開発委員会」主宰。批評誌『PLANETS』編集長。サブカルチャーから政治まで、幅広い評論活動を展開する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スパイク
33
著者は、現代の日本文化を語るうえで欠かすことのできないサブカルチャー、オタク文化という氷柱に潜む本質をクリアカットに削り出す。チェーンソウで大胆にぶった切り鑿で削ぎ彫刻刀で細部を浮かび上がらせる。ただの透明な立方体のどこにアウトラインが隠されていたのか寸分たがうことなく氷の白鳥が姿を現す。…まで書いて、いわんとしていることが解ってないけれど見事に現象の本質を切りだしているということを言いたいのだと解っていただきたい。だからどうなの?といわれても困る。だって、著者の言いたいことはぜんぜん解らないんですから。2015/09/05
夜間飛行
24
創造と消費の区別されない「中間」から文化が生まれるというのは面白い。昔は街がその場所だったが、現在ではインターネットへ拡散しつつあるそうだ。私は昔、三日にあげず原宿をぶらついていた。今思うとそれは他に居場所がなかったせいである。創造でも消費でもない、ああいう消極的参加は文化とは無縁だと思っていたが、この本を読み、そうでもないかなと思い直す。坂口安吾はドライアイスの工場を美しいと言った。俗なる所に文化があるというのはうれしいが、安吾のような屹立する鋼鉄の強さを持たない文化漂流民にとって、本書は有り難かった。2013/08/02
maito/まいと
20
宇野さんの著書としては早い時期のものだったこともあり、サブカルチャーオタクに近いポジションからの批評は今よりソフトでかえって物足りない(笑)ただ、インターネットの普及やサブカルチャーの変異による社会構造の"目に見えない")変化を的確に指摘する鋭さや問題意識の高さは今読んでもハッとさせられる。長い歴史によって構築された場所の価値とは違う文脈(聖地巡礼など)で作ることができてしまう、新たな情報化の流れは、コロナ渦による衣食住の変化と重なるところが多く、発信の可能性と怖さを再確認。ユーザーモラルはますます重要だ2020/08/24
服部
15
「100分de名著」の石ノ森章太郎の回で話していた宇野常寛さん面白いな、と思いこの本を手にとってみました。一見読みやすそうなテーマで構成されていますが、内容が盛り沢山で、途中立ち止まりながら読み進めました。クールジャパンを世界に広めるための具体的な方策や、情報の価値が下がりコミュニケーションの価値が上がっているという指摘が面白かったです。2018/10/11
林 一歩
14
AKBになんの思い入れもない身としては、著者を含む著名な批評家達が口角泡飛ばし彼女たちについて熱く論じている姿は不気味でしかない。クールジャパンに関する考察には膝打ち。振幅が激しい人だと思う。2015/07/06