内容説明
人はどうしたら苦しみから自由になれるのだろうか。私たちは、生まれ落ち成長するにしたがって、世界を言語によって認識し、概念を動員して理解する。それは、社会で生きる以上不可欠なものかもしれないが、いっぽうで迷いや苦しみの根源でもある。『般若心経』には、そうした合理的知性を超えた、もうひとつの「知」が凝縮されている。大いなる全体性のなかに溶け込んだ「いのち」のよろこびを取り戻すための現代語訳決定版。
目次
1 「般若心経」(大本)の訳
2 「般若心経」(小本)の訳
3 「般若心経」(小本)の書き下し
著者等紹介
玄侑宗久[ゲンユウソウキュウ]
1956年福島県生まれ。慶應義塾大学文学部中国文学科卒業。83年、天龍寺専門道場に入門。現在、臨済宗妙心寺派福聚寺副住職。また、2001年「中陰の花」で第125回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅてふぁん
42
一冊まるごと仏教的な思想の話かと思いきや、物理や科学、宇宙の話が多く出て来た。あれ、仏教って物理学の知識が必要なの?難しい。もちろん理解できると思って読んだわけではなく、日本で古くから親しまれている『般若心経』にはどんなことが書かれているんだろう、という好奇心から手に取ってみたのだけれど。何となくわかったようで、わからない。わからなくてもいい。読んでよかった。巻末に般若心経の読み方が記載されていて、声に出して読んでみた。心地良い響きだ。せっかくなので写経してみようかな。2018/03/04
ネジ
39
★★★★★ 般若心経を平易な文章に噛み砕いて訳した本。ただし、内容はそのまま(合理的知性を超えたもの)であり、難しい。繰り返し読んで少しづつ身に染み込ませたい。ちなみに、一回読んだだけでも般若心経がある程度意味を理解して唱えることができた。 ①人は言葉、概念を介して世界を理解しようとするために、誤り、苦しみを生む。 ②個(私)への執着から解放され、大いなる全体性に溶け込んだ「いのち」であることに気づく。 ③(私見)般若波羅蜜多は理想、真理であるかもしれないが、到達しえないとも思う。まずはそこを理解したい。2023/12/09
いりあ
27
玄侑宗久による般若心経の解説書。最近流行りの写経で取り上げられることが多い心経ですが、経典のエッセンスを濃縮してあり、内容を理解するのは難しいです。本書では大本を使用し、"般若波羅蜜多"を軸に独特の観点から説明してくれています。解説本は色々出版されていますが、宗教色の薄いものは珍しいと思います。ある程度詳しい人には物足りないかもしれませんが、ちょっと興味があってという初心者には最適の入門書ではないでしょうか。特に東洋のお経の内容を西洋の科学と結びつけながら説明していく手法には目からうろこが落ちました。2013/02/11
黒猫
26
再読。般若心経はわかりやすそうで難しい。今の私にはただただ、唱えることしかできそうもない。しかし、これだけは覚えておきたい。「私」とは頭だけ。「いのち」とは別のものだ。「私」が死にたいと思っても「いのち」はそれを許さない。水に飛び込めば苦しいのは「私」であり、他の細胞は生きるためにもがく。辛い、死にたい、苦しいのは、「私」であり、「いのち」ではないのだ。ということを。2017/12/10
黒猫
24
再々々読。意味はわからなくても良いところが般若心経の良いところであり、意味を知りたくなるのが人間である「わたし」だという。般若心経は毎日唱えている。毎日唱えていると、この本から訳を学びさらに般若心経を読むと理解が深まっていく気がする。しかし、般若心経はそもそも頭で理解するなという。ギャーテイギャーテイからの呪文は理解するより、毎日唱えていることに意味がある。読みながら般若心経を理解しようとしてしまうところが私の未熟なところだ。しかし、この本は他の数多ある般若心経の訳の中でも分かりやすい。また読むだろう。2017/12/22