ちくま文庫
シルトの岸辺

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  • サイズ 文庫判/ページ数 510p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480038777
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

内容説明

中世の都市国家ヴェネツィアをイメージさせる架空の国オルセンナ。その東方に広がるシルト海を隔てて、敵国ファルゲスタンとは無為・無策・安逸のうちに、300年間も対峙し続けている。物語は、その前線シルトの城砦に「私」が監察将校として赴任するところから、おもむろに始まる。しかし、いつしか物語は緊張をはらみ、密度と速度を増し、安穏と倦怠の日常は、破局の予感へと高まって行く。―孤高の作家グラックの独特な香り高い詩的散文体が描き出す、静謐・精細な魔術的物語世界。20世紀フランス文学の傑作長編。原文の香気を見事に映す名訳で贈る。

著者等紹介

グラック,ジュリアン[グラック,ジュリアン][Gracq,Julien]
(1910‐)フランスの詩人、小説家、評論家。本名ルイ・ポワリエ。高等師範学校で地理・歴史を学び、卒業後は高校教師となり定年までつとめた。シュルレアリスムの後継者の一人と目され、幻想に彩られた凝縮された詩的文体で、独自の文学世界を築き上げた

安藤元雄[アンドウモトオ]
1934年、東京に生れる。東京大学仏文学科卒、詩人。明治大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

maimai

10
僕の拙い知識や表現力では、短い文章で表現するのは難しい。括弧付きの言葉使いを許してもらえるなら、〈文明論〉としても〈コミュニケーション論〉としても読める。〈政治小説〉でもあるかもしれない。そして何より滅法面白い小説である。最後の4分の1ほどは怒涛の展開。ああ、面白かった。但し、一気読みはお薦めできない。吟味しつつ少しずつ進むべき。2021/10/31

ふるい

10
破滅へと向かう宿命の歯車の音が聞こえてくるような緊張感が終始漂っている。特に最終章の「都の真意」は読んでるこっちも息が詰まりそう。なんだか登場人物の動きがお芝居めいて見えるのは本人たちも自覚済みのようだ。すごいもの読みました。2017/06/08

あ げ こ

8
不穏。緩みなく、間隙なく重ねた。不吉であり、酷く曖昧な確信。聞こえる。響いて来る。それは根を広げ、予兆と化し、波及して行く。あの緊迫感。高ぶりの極致とも言うべき瞬間へと至る。いつか訪れると、来る事をとうにわかっていた瞬間へと至る。あの歓喜。熱く、愚かしく、切実な。何もかもが誘いであったかのよう。何もかもが意図を、同意を含んでいたかのよう。隈なく不穏であるまま。滅びへと繋がる情熱の脈動を奏で。必然さを奏で。滅びそのものの複雑さを奏で。醜さを奏で。高揚を奏で。飲み込んで行く。佇み、眺める事を許さず。渦中へと。2016/06/26

rinakko

6
色味の失せた暗鬱な雰囲気がとても好きで、宿命という主題も興味深かった。最後の章は凄かった(自分の不調と重なったのが残念…)。2013/08/05

sibafu

5
近代の架空の国家間の休戦状態を舞台とした20世紀フランス文学。長編だし一々くどい文体は疲れるのだが、この酷く緩い空気感の中を漂う何かが起きそうな不安によって傍観者としての期待は高まる。冷戦という水面下での0が1に転ぶか否か、という緊張感の演出がとても上手い。長い物語の中、一人の主人公に寄り添って読むからこそ、この結末への思い入れが強くなる。初めて読んだ作家で邦訳は少ないが、これは読んでみてよかった。岩波文庫から出ている『アルゴールの城にて』も気になる。『シルトの岸辺』の新版も岩波文庫から。2014/10/11

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