内容説明
フロックコートに山高帽子、独身ドイツ語教師の百鬼園先生は、物物しい仏頂面で毎日何でもない事に腹を立てながら暮らしている。隣の鶏を制裁するために卵の殻を外に捨てるという行為に隠された深謀、停留場で電車を眺めながら思索する人口問題、食糧問題の解決方法…とことん真面目にものを考えると、とんでもなく可笑しいことになる。独特の論理で抱腹絶倒の一冊。
目次
百鬼園先生言行録
百鬼園先生言行余録
百鬼園先生言行録拾遺
掻痒記
弾琴図
猪の昼寝
狸気濛濛
正直の徳に就いて
茗荷屋の足袋
鉈豆〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
14
随筆の中にところどころ幻想小説みたいな一節が出てくるのが好きです。2013/12/08
羽
11
☆☆☆ 内田百閒はあだ名を七つ持っており、それら全員が登場する物語をこのように書き始める。「本来ならば各人別別に登場する事にして、その際一人ずつの風態なり歩き振りなりを説明して行くのが順序であるが、面倒だからみんな集まったところから始める。時候もきめておく筈であるけれど、そうすると窮屈になって、後で何か矛盾した事が起こると困る。それで季節不明と云う事にする。」電車内で読んでひとりでニヤニヤしてた。こんなことを書いてる作家さん他に知りません。笑2015/08/26
二人娘の父
5
磯田道史さんが紹介していた「忘却」全文を読むために購入。初めての内田百閒。以前から興味はあったが、聞きしに勝る文章。戦前の市井の様子がよく分かる点も興味を深くする。敬愛する真島昌利の詩に「わかったんじゃない 思い出したんだ」というのがある。忘れることの意義を説く著者の精神と同一のものを感じる。天才は天才を知るのであろうと、勝手に納得する。夏目漱石の弟子だったというのも、恥ずかしながら初めて知る。奇才を感じるのは師匠ゆずりなのだろうか。2021/02/11
いきもの
2
さすが百鬼園先生。文章が素敵です。「お前ではなし」は流石だなぁ。2016/01/03
かんたろう
2
「七体百鬼園」が一番のお気に入り。百けんには7つのペンネーム?があったらしく、それぞれが別の人格として作者の内田百けんの元に一堂に集まり喧々諤々の議論を繰り広げるという人を喰った話だが、ちゃんと人格の書分けができていて凄く面白い。「世の中に人の来るこそうれしけれ とはいうもののお前ではなし」という蜀山人の歌をもじった百けんらしい川柳も味がある。読んでいるとじわじわ面白くなる話ばかり。2013/04/06