内容説明
井上安治、風景画家。元治元年、浅草生れ。十四歳の時、小林清親に入門。明治二十二年没。二十五歳。安治は東京に何を見たのだろうか。明治の東京と昭和の東京を自在に往き来しつつ、夭折の画家井上安治の見た風景を追い、清親との不思議な師弟関係を描く静謐な世界。他に単行本未収録作品を併録。
目次
YASUJI東京
単行本未収録集(術;梅殿桜殿;白犬;鏡斎まいる)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
99
井上安治という人を初めて知る。この本だけで彼の全体が分かることはないが雰囲気の一部は伝わってくる。杉浦日向子さんの絵はカット割りのなかにシーンとした時間が流れている気がする。東京という町はどこを描いても絵になる所だったのだなー。井上安治のこと、もうすこし知りたくなった。2018/02/04
優希
80
美術方面に疎いので、この漫画で初めて井上安治を知りました。風景画家として見つめた東京は一体どのようなものであったのかを想像してしまいます。夭折だったが故に眺めることのできた風景があったことでしょう。静謐な世界が印象的です。2018/04/18
fwhd8325
53
NHKの日曜美術館で、井上安治さんの特集を見て、触発されました。番組の内容は、この著書に集約されています。杉浦さん、わかりやすく描かれています。まだ、この名残を感じ取ることのできる景色がいくつかあるとのこと。町は生き物だからと言ってしまえば、それまでのことだけど、東京で生まれた私にとって、この町は原風景です。安治の作品の風景は、私が、生まれた頃には、すでに遠い景色もありますが、原風景を何ものにも邪魔をされたくないと思うこともあります。画工井上安治は、そうした心を刺激してくれたようです。2018/05/27
かっぱ
47
井上安治という風景画家のことは知らなかったです。東京を描いて26歳という若さで没する。安治の描いた東京には感傷などはなく、ぽっかりとそのままの姿がある。安治が見た東京とはどんな東京だったのだろう。時代は違えども安治の目を通して見た東京を現代人の私が見る。アスファルトの下にはいまも原野が眠っている。安治の絵を通して、その息づかいを感じることができるのではないか。「YASUJI東京」ほか、6つの作品からなる短編漫画集。解説は南伸坊。2017/01/12
saga
37
短命の浮世絵師・井上安治を主題としながら、現代の女子大生が彼氏であろう同級生と掛け合いをしてYASUJIの絵を紹介していく。師匠(と勝手に私が呼ばっている日向子さん)が井上安治に興味を抱いていることは他のエッセイ等から知れており、本書購入の動機にもなった。単行本未収録集も良かった。まんが日本昔ばなしのようだった。2014/06/22