内容説明
青春期の輝きだけが照らし出すことのできる真実の世界―光速でこの世を駆けぬけた天才詩人A・ランボー(1854‐1891)のほぼ全作品と主要な手紙を、読みやすく美しい新訳でおくる待望の集成。ランボー研究に心血を注いできた訳者が、近年の研究とテクスト・クリティックのいちじるしい進歩をふまえた訳文に、読みの地平を開く明快な注を付しておくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
32
多くの人が絶賛しているからといって、面白くないものを「面白かった」とは言いたくない。どんなに有名な名著でも、分からないものを分かったようなフリはしたくない。たとえ、そのことによって、つまはじきにされたとしても。 それが、偏屈者の矜持だ。/ ル・クレジオの『隔離の島』にランボーが登場するので、その導きで、ランボー嫌いの僕が無理矢理ランボーを読んでしまおうという魂胆。/2021/04/25
白義
12
厨二病という文字に赤く大きくアルチュール・ランボーとルビをふっても違和感のないTHE・厨二病。豪奢で視覚性豊かな、色彩に満ちた激しい光のような言葉が閃き、想像力を解き放ち意識を創造せんと孤高の世界を紙上に刻み付けている。その詩的イメージは多分に漫画的なのだが、中には静謐でポストモダニックな、謎めいた雰囲気の作品もあり、想像以上に多彩な作風。ランボーと言えば訳者がとにかく彼の熱にイカれちゃってるイメージがあるが、本書は全詩に冷静な距離感を持った分析的解説が付され、腰を据えて読むにもピッタリである2012/08/16
月
11
詩人となる人間が最初にしなければならない探求は、自分自身を認識すること、それも完全に認識すること。自分の魂を探求し、仔細に調査し、試練にかけ、それを学び、自分の魂を知ったらすぐに、それを養い育てなければならない。問題なのは、魂を怪物じみたものにすること。ランボーのいう詩人とは、あらゆる感覚の、長い間の、大がかりな、そして合理的な狂乱化を通して、見者となり、詩人は見者であらねばならぬし、自らを見者たらしめねばならない。私とは一個の他者であるとは、つまり見者である私でもある。 2017/04/13
亀野亜祐美
11
学生のうちに読んだほうがいいですね。性悪説のたちばにたてば、おちつく本とは、こういう本ではないですかね。2013/11/23
mstr_kk
9
ことあるごとにところどころ読んでいた本。 今回は、他の人の訳で読んで意味が分からなかった詩について、訳註などを参照しつつ理解するための参考書のようにして読みました。 平易な訳文になっているので、外連味を求める向きには物足りないかも知れませんが、これくらい分かりやすくしてくれていないと心に響かないよなあと思うことも多いです。僕にとっては非常にありがたい一冊です。2014/05/22