内容説明
鴎外の子供たち―於莵、茉莉、杏奴、類。みなそれぞれ、強い個性を持ち、父親を愛し愛されていた。しかし兄姉間の仲は、そううまくはいかなかった。妻志け、子供たちを取り巻く不協和音。明治の文豪のプライヴェートな部分を末子の目が捉えた貴重な書。
目次
1 森家のきょうだい
2 父、鴎外のこと
3 茉莉の結婚・父の死
4 母の位置
5 不肖の子
6 恋愛時代・パリへ
7 画学生のころ
8 母の死をめぐって
9 嫁さがし
10 本屋さん開店
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TakaUP48
36
「類」の読後、気になって手にした本。森類という人は、凄く記憶力のある人だ。勉強が苦手というけれど、様々な知識を持っていた人だと思う。様々なエピソードの場面描写は、こと細かく着物の色や柄、横顔までも思い出して書かれている。その場を、しっかり切り取れるのは、画家の本能なのだろうか。家人へには、結構ズケズケ書いているのには驚いた。会社員が首になった時、元同僚に言われた言葉「役に立つ立たないではなくて、君が現代に生きていることが無理なのだ。」でも、生きていかなくちゃ。パッパは、天国からどう見ていたのだろうか。2020/10/23
sasa-kuma
20
森家読書年間③ なるほど、今で言うなら暴露本。この本をきっかけに茉莉、杏奴に絶縁されている(のちに茉莉とは和解)。あの姉とこの弟にはさまれた杏奴はしっかり者にならざるを得なかったのだろうと想像できる。天真爛漫な心で書きたい放題の印象だ。読んでいる方は面白いけれど、内輪の人々はたまらないだろうな。茉莉や杏奴がオブラートに包み文学的に処理している出来事や内情を赤裸々に告白。解説に「鷗外の子供たちの中では、類の文章が一番鷗外に似ている」(佐藤春夫談)とある。鷗外も読まねば(恥ずかしながら未読)。次は於兎にいく。2016/02/21
ぱせり
19
母志けと鴎外の子どもたち。生活そのものが非凡というよりも、彼らの心のありようが非凡であったのだろう。エッセイというより、大河小説を読んでいるような充実感を感じた。濃い家族です。それぞれがなんと愛おしい人たちなのだろう。2014/05/26
bluelotus
12
★★★★☆ 朝井まかてさんの『類』がまだまだ手元に来そうになかったのでこちらを先に。ほんの数ページ読んだだけでも兄妹、そして両親の個性がわかるような強烈さだった(笑)どの兄妹も森鴎外についてのエッセイを書かれているようだが、おそらくこの末子の類さんが一番冷静な眼差しだったのではないかと思う。父親としての森鴎外も素敵だったけど、その分、可愛い子供を残して亡くなる時は辛かっただろうな…。2020/10/25
itokake
11
2019年読了。森鴎外の子どもたちは、それぞれに本を出しているが、本書の輝きはひょっとして鴎外を超えるかもしれない。著者は末っ子の類(るい)。姉の茉莉は本書を読んで卒倒し、もうひとりの姉、杏奴(あんぬ)も類を責める。問題部分は削除されてしまい読めない。そんな不穏な空気はどこへやら、読み始めると、森家の人々が生き生きと呼吸をし始める。文豪の父親としての側面や、兄弟姉妹たちのやりとりなど、当時の日常を描く。茉莉が鴎外の作品と言われるが、私は類を強く推す。読み終わりたくなかったと感じさせてくれた初めての本。 2019/12/01