内容説明
本書は明治・大正・昭和にわたる「漢学者」たちの特異な伝記である。それは逆流のなかに骨太に生きた自信あふれる男たちの物語である。中心に据えられたテーマは「近代日本と漢学」。彼らは時代にどのように働きかけ、今日に何をもたらしているか。
目次
近代日本と漢学(明治の漢学―文明開花の嵐のなかで;大正・昭和の漢学―孤軍奮闘する作家たち;戦後社会と漢学―漢学復権への道)
漢学者はいかに生きたか(根本通明―北から来た男;中島撫山―地方文化の培養;中野逍遙―恋に生き恋に死す;中村敬宇―漢学と英学;桂湖村―早稲田漢学の栄え;小柳司気太―醇儒・無我の人;宮島大八―大陸とのかけはし;簡野道明―官を去って自由に)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かず
11
北越の松下村塾と呼ばれた、越後粟生津村(現燕市)の長善館。その資料館で読書。序文、中村正直(西国立志編の著者)、桂湖村(長善館出身の早稲田大学の漢学者)、小柳司気太(長善館出身の漢学者)の項目のみつまみ読み。新潟にも人材を輩出した私学があったことに驚くと共に、維新後の西洋文明摂取において、漢学者達が果たした功績を理解することができました。心に残っているのは、「口先だけの儒学ではだめで、学んだことを時勢に応用することが大切」という言葉でした。趣味で学んでいる東洋思想を社会に役立てるべく頑張りたいと思います。2017/12/03
しずかな午後
5
前近代には学問の王様ありながら、近代以降、衰退の一途をだとり、現在は「漢文」としてわずかに残る漢学。本書はそんな漢学の近代史を、人物伝として見せてくれる。戊辰戦争に参加した武士にして帝大教授の根本通明。文明開化の世に江戸の儒者の如く生きた中島撫山(中島敦の祖父)。清新な恋愛を漢詩で歌った中野逍遥。儒者の身で渡英した『西国立志編』の中村敬宇。桂湖村をはじめとする早稲田漢学の山脈。道教研究の小柳司気太。日清友好の礎たらんとした宮島誠一郎・大八。そして『字源』の簡野道明。どの学者も立派で背筋の伸びる思いがした。2022/07/09
ひよピパパ
5
明治・大正・昭和にわたって活躍した「漢学者」8名を紹介した書。中でも「周易」研究の根本通明、中島敦の祖父である中島撫山、道教研究の小柳司気太、学生時代私も「論語集註」でお世話にあった簡野道明の伝記が印象的。2018/01/17
Auristela
3
百年以上前の歴史が連続とはとても思われないなー。漢学を勤めたい。2017/02/04
ろーじゃ
2
漢学者と一口に言っても、一生を四書五経の研究に身を捧げた者もいれば、和漢洋バランスよく学問を身につけた者まで、様々な人生を歩んでいる事が分かります。 文明開化の風潮の中、洋学へ傾倒する者が増える一方で、漢学者たちはすぐれた漢籍の知識をもって社会へ進出し、明治維新の隠れた担い手となった事は無視できません。 また、特に欧米由来の外国語がひたすら入り乱れる現代だからこそ、読んで欲しい本であります。2012/07/05