内容説明
期待を込めて発足した近衛内閣であったが、満州における軍部の活動は前進あるのみ。蒋介石政府との和平はならず、日支国交は断絶し、支那事変は日中戦争へと発展。国益のため、「日独伊三国同盟」に加わるものの、世界からは孤立し、日本はずるずると戦争へとのめりこんでいく―。
目次
倒閣抗争
蘆溝橋事件
事変拡大
徐州作戦
ソ連軍進出
汪兆銘脱出
ノモンハン事件
第二次大戦勃発
世界の孤児
桐工作
陸軍の倒閣工作
三国同盟
感想・レビュー
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ころこ
30
「昭和天皇は死に、高松宮が即位する」という霊感による島津大逆事件は松本清張『神々の乱心』の元ネタになっている。二・二六事件が昭和天皇個人に対する思慕でなく、皇祖皇宗に対する君側の奸コンプレックスだとすれば、島津治子が持つ時代の空気は二・二六事件から一直線につながっている。盧溝橋事件が起こり、日中戦争に突入する。大陸の動静とそれを制御できない内閣の交代が相次ぐ。拡大か和平か、双方の勢力が内輪の論理と各々の地位の維持に腐心していて、この対立を止めるのがテロやクーデターという隘路に陥る。2024/05/28