出版社内容情報
☆2005年3月8日から5月29日まで国立西洋美術館(東京・上野公園)で、本邦初の展覧会が開催されています。
☆2005年3月18日の「週刊読書人」に紹介されました。
<内容紹介>
17世紀の画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの名は既に世界的であるが、日本での認知度は未だ低い。しかし、一度でもその作品を見た者にとって、彼の絵は忘れがたい印象をもたらす。蝋燭の光に照らし出された人物像など、光と闇、聖と俗の二面性を鮮やかに描き出したこの画家は、没後は急速に忘れ去られ、20世紀になってから劇的な形で再発見された。本国フランスでも話題を呼んだ、ラ・トゥールの生涯と絵画の「再発見史」。
<目次>
第1章 1915~34年 ラ・トゥールの作品と生涯が再発見される
第2章 1934~47年 無名の画家から、「ロレーヌの非常に有名な画家」へ
第3章 1947~72年 傑作の他国の流出と、困難な年代の特定
第4章 1972~2004年 作品は広く知られるようになったが、ラ・トゥールは依然として謎の画家でもある
<日本語版監修者序文より>
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他方この画家は,没後は急速に忘れ去られ,20世紀になって劇的な形で再発見されたという不思議な経緯を通じても知られている。主として近世に至るまでロレーヌ地方を襲った度重なる戦火が原因で,現在まで残る真作はおよそ40点に満たない。他の作品は失われたか模作などを通してのみ知られるという事実は,さまざまな美術史的憶測を呼んだ。そのドラマティックな再発見の物語と,作品の寡黙で詩的特質や希少性,ヴェールに包まれた画家自身の存在にまつわる謎などから,しばしばオランダの画家フェルメールに比較されるのは理由の無いことではない。
2004年春,国立西洋美術館はこのラ・トゥールの希少な初期作品の傑作のひとつ「聖トマス」(1624年頃)を購入し,続いて翌2005年春に向けて,この画家を本格的に紹介するわが国最初の展覧会を企画することができた。世界的にみても,1996年のワシントン展,97年のパリ展以来の大規模な回顧展である。本書は,この日本におけるラ・トゥール展の組織委員であり,かつてパリにおけるラ・トゥール展を中心となって企画した前ルーヴル美術館絵画部長ジャンー=ピエール・キュザン氏と,その補佐をしたディミトリ・サルモン氏の共同執筆になる,フランスでも話題になった記念碑的著作である。その大きな特徴は,ラ・トゥールの芸術を様式や図像の分析,画家の生涯といった面からたどるのではなく,「再発見史」という観点から一貫して取り扱ったことにある。この短い前書きで提示したようなこの画家にまつわる事実や疑問は,すべて凝縮されまとまった形で,この小さな版型の書物に詰まっているのである。新たに書き加えられた最終章には,近年のラ・トゥールをめぐる話題も書き加えられている。ラ・トゥール芸術の熱烈な愛好家も,この東京展を通じて「発見」した人も、まずはこの書を紐解いてみるにしくはない。
<著者略歴>
J.P.キュザン;ルーヴル美術館絵画部門主任学芸員。17世紀と18世紀のフランス絵画(ヴーエ,ル・ナン,フラゴールなど)やイタリア絵画とフランス絵画の関連についての著書、論文、展覧会カタログを数多く書いている。1997年にグラン・パレ(パリ)で開かれた「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール」展で組織委員を務めた。 ディミトリ・サルモン;社会科学高等研究院で、聖母マリアへの受胎告知の図像をテーマとした論文を作成している。ルーヴル美術館絵画部門の協力者で、1997年にグラン・パレ(パリ)で開かれた「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール」展で助手を務めた。共著のJ.P.キュザンとともに、2005年の東京での「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール」東京展の運営委員会に参加。
<監修者略歴>
高橋明也;東京藝術大学大学院修士課程修了。オルセー美術館準備室に在籍。現在、国立西洋美術館主任研究官。西洋近代美術史専攻。主な企画展に「ドラクロワとフランス・ロマン主義」(1989年)、「バーンズ・コレクション」(1994年)、「オルセー美術館展」(1996・1999年)。主な著書に「ドラクロワ」(ニ玄社)、「ゴーガン」(六耀社)、訳書に「ロマン主義」(岩波書店)がある。2005年、本書の著者とともに「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール」東京展の共同組織委員を務める。
感想・レビュー
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KAZOO
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わんこのしっぽ
A.T
春ドーナツ